杉戸農が誇る「めがねカルテット」が、黒縁フレームの奥の目力で、好球を見逃さなかった。0-3の4回無死満塁。まずは6番松田龍一外野手(3年)が中犠飛を放ち、反撃ののろしを上げた。この回、一気に4点を奪って逆転に成功。5回には9番安藤樹外野手(3年)が9点目の中前適時打を放った。残る2人は好守を連発。1番佐藤一外野手(3年)が安定した守備を見せ、7回はエース早川直輝投手(2年)が1死満塁のピンチを併殺に打ち取り、その裏にコールドを決めた。8年ぶりの夏1勝でもあった。

 めがねを着用してのプレーは困難が伴う。佐藤が「雨の日は、レンズに水滴が付いたり、曇ったりします」と話せば、安藤も「ヘルメットをかぶるとずれる」と嘆く。松田は「暗くなると見えづらく、ボールが歯に当たって前歯が抜けたことがありました」と悩みは多い。それでも松田は「相手校から『紛らわしい!』『また同じやつが打ってる!』と言われます。打順とか、混乱させられますね」と黒縁カルテットのインパクトは絶大で、対戦校への脅威? にもなっている。

 4人とも、めがねに強いこだわりがあったわけではない。早川は「コンタクトを入れるのが怖いから」、残る3人は「家族全員めがねなので」との理由だが、偶然スタメンに4人集まった。大森栄蒔(えいじ)主将(3年)も「チームのアピールポイント」と認める、杉戸農の代名詞になっている。次戦は17日、叡明-城北埼玉の勝者と。4人はめがねの奥の瞳を輝かせ、「次もめがね打線で勝ちます!」と声をそろえた。【杉山理紗】