全国高校野球静岡大会1回戦23試合が今日16日、行われる。創部9年目の城南静岡は浜松商と対戦。4月から指揮を執る船川誠監督(66)が、部長として1978年センバツ優勝など、春夏3度の甲子園出場に導いた因縁の相手だ。

 軽い足取りでバットを構え、船川監督がノックを放った。「腰を落とせ!」「たらたら歩くな!」。選手よりも大きく響く声で指導する姿は、元気そのものだ。かつて膵臓(すいぞう)がんの摘出手術を受けており、毎朝、昼、晩、就寝前のインスリン注射は欠かせない。多発性骨髄腫の治療で、月1度の検診と抗がん剤の服用も続けている。「満身創痍(そうい)ですが、グラウンドに出れば病気も忘れられます。『あ、そういえば俺、病人だった』ってね」。笑い飛ばし、悲愴(ひそう)感はかけらもない。

 今日対する初戦の相手は浜松商。72年に新卒で赴任して部長を務め、磯部修三監督(76=現浜松開誠館監督)と組んだ10年間で春夏3度聖地を踏んだ古巣だ。

 「因縁を感じた抽選でしたね。浜商も15年も(甲子園に)出ていないし、気合が入ってるでしょう」

 名門相手に厳しい戦いが予想されるが、部員をしっかり鼓舞している。

 「最少失点でしのいで、7、8、9回の後半勝負に持って行ければ、何があるか分からない。『気持ちだけは負けるな』と言ってあります」

 監督としては10年ぶりの夏の大会。名将に指導を受ける感謝を込めて捕手の鈴木隆良(3年)は言った。「監督のためにも、自分たちのためにも『因縁の対決』に勝ちたいです」。桜井靖記主将(3年)も「勝って勢いに乗り、城南静岡の新しい歴史を刻みたい」と意気込んでいる。浜松球場午前9時試合開始。声を響かせる船川監督のもと、全力で番狂わせを狙う。【鈴木正章】

 ◆船川誠(ふなかわ・まこと)1949年(昭24)9月10日、静岡市生まれ。静岡高を経て早大を卒業。浜松商で指導後、82年から静岡の監督。同年の夏、87年夏に甲子園出場。93年から清水東、02年から静岡市立で指導。10年春に定年退職。12年から中学硬式野球の静岡ジュニアベースボールクラブの監督を務めた。