10年ぶり10度目の夏の甲子園出場を目指す静岡商が、6-2で浜松南に逆転勝ちした。初回に先制されるも、その後は先発河合優作(3年)が7奪三振の好投。直球主体の投球で追加点を与えず、5回の逆転を呼び込んだ。昨年11月に就任した同校OBで元巨人の新浦寿夫コーチ(65)と藤波行雄コーチ(65)も観戦した中、名門が底力を見せつけた。

 河合が尻上がりに調子を上げ、静岡商の逆転勝利を呼び込んだ。初回は1死二、三塁のピンチで内野ゴロの間に先制点を献上。出ばなをくじかれたが「とにかく思い切り腕を振ることを意識した」と開き直った。2回は3者連続三振。3回以降も直球主体の攻めの投球を見せ、4回は3者凡退。6回105球を投げ、追加点を与えなかった。

 エースの力投に打線も応えた。1点を追う5回には相手のエラーも絡み、1死二塁のチャンスを作ると、3番須永湧大内野手(3年)が同点となる適時打を放った。さらに、敵失で1死三塁とし、4番浜田大輝(3年)の犠飛で勝ち越しに成功。6回には3点を加え、勝負を決定づけた。

 この日、スタンドでは新浦コーチと藤波コーチが戦況を見守っていた。普段の練習で打撃投手も務める新浦コーチの評価は厳しく「まだまだだね」。藤波コーチも「河合は重心が高かった。ここからが大事」と指摘した。それでも、名門復活を願い、日ごろは熱心な指導を続けている。そんな偉大な先輩からのアドバイスを受けて成長した河合は「新浦コーチが(手本で)投げる球を見るだけで勉強になります」と、感謝の気持ちを口にした。

 名門校ゆえに、数多くのOB、学校関係者、ファンが注目している。この初戦を「苦戦」とする見方も多いが、前回甲子園に出場した2006年も、初戦から静岡大成に7-5と大苦戦していた。二転三転する試合展開で9回表に2点スクイズで決着。そこから勢いに乗った。連覇を狙った07年は準優勝し、12年は決勝で苦杯をなめた。昨年は準決勝でライバル静岡に敗戦。多くの先輩たちの思いも胸に秘め、河合は力強く言った。「僕らは常に甲子園で勝つことを目標にしてやっている。今年こそはみんなで一丸となって優勝したい」。10年ぶりの聖地へ。静岡商の挑戦が今年も始まった。【神谷亮磨】