「下北から甲子園」を合い言葉に、快進撃で7年ぶりの決勝進出を果たした大湊だったが、八戸学院光星に0-11で敗れ、初の甲子園はならなかった。2人の投手が計8四死球を与え、計8安打を打たれ完敗。だが下北魂で最後まで敢然と戦い、下北半島に夢を与えたナインに、温かい拍手が送られた。

 決勝で下北旋風は吹かなかった。投手陣が本来の投球ができず11失点。打線は光星のエース桜井一樹(3年)の前に10三振を奪われ、完封を許した。今大会、いずれも甲子園出場経験を持つ青森山田、八戸工大一、弘前学院聖愛と私立4強のうち3校を破った。最後の光星の壁は厚かった。

 工藤公治監督(44)は「負けたことも悔しいが、ファイナルでもっといい、手に汗握るような試合ができなかったことが一番悔しい」と振り返った。「私立3校に勝ったが、今日はちょっと違った。光星の見えない圧力というか。向こうも昨年悔しい思いをしたんでしょう」と語った。

 先発し2回2/3で6失点の高塚耕大(3年)は「今までの相手と違い、低めの見極めがすごかった」と光星打線の力を認めた。4安打を放った坂本恒太朗捕手(2年)は「4安打でも悔しい。捕手として光星の強力打線をどう抑えようかばかり考えていた」という。

 優勝はならなかった。だが、この夏の下北半島を熱く盛り上げた。この日はむつ市の宮下宗一郎市長が駆けつけ、スタンドで声援を送った。むつ市内ではPVも行われた。試合の時間帯は道路もひっそり。市民や下北の人たちが祈るような応援を送った。球場ではナインにねぎらいの声と拍手が送られた。

 大湊を強豪に育て上げ、05年に亡くなった富岡哲氏(享年49)の掲げた「下北から甲子園」が、再び大きく脚光を浴びた。工藤監督は「何が足りなかったか。1、2年生と一緒にまた頑張っていきたい」ときっぱり。ネバーギブアップ、下北魂の大湊が再び立ち上がる。【北村宏平】