「高校ビッグ3」の一角、履正社(大阪)の寺島成輝投手(3年)が公約通りの150キロで甲子園デビューした。

 山田哲人(ヤクルト)の夏の1勝に、寺島が続いた。10年以来の履正社の夏2勝目。「すごく新鮮でうれしかったです。甲子園はどこよりも暑い球場でした。熱気もすごかった」。聖地は、熱さの記憶になった。

 熱気を呼び寄せたのは、その左腕だ。8回1死で清水への4球目。ファウルを打たせた通算121球目は、アストロズのスピードガンで150キロをマークした。「甲子園で出せたらいい」と目標にしてきた自身初の大台。05年夏の大阪桐蔭・辻内崇伸(元巨人、スカウト計測で156キロ)09年夏の花巻東(岩手)・菊池雄星(西武、同155キロ)ら歴代の高速左腕に仲間入り。9回に球場表示でこの日の最速146キロをマークするなど、メジャー4球団を含む日米16球団のスカウトをうならせた。

 「ストレートがホップして上に消えた。『わかっていても打てない直球』はこういう感じなんだと思った」。高川学園唯一の適時打を放った相田が証言。寺島も「ストレートを狙われても、抑えることができた」と磨いてきた直球の進化を実感した。

 横浜(神奈川)・藤平尚真(3年)花咲徳栄(埼玉)・高橋昂也(3年)と「高校BIG3」と呼ばれるドラフト1位候補。ただ甲子園は、見果てぬ夢だった。大阪大会準決勝の朝、「おじいちゃんとおばあちゃんを甲子園に連れて行きたい」とつぶやいた。支えてくれる人への思いも、大阪決勝を勝ち抜く力にした。決勝は金光大阪を完封。勝って泣く息子の姿に、母浩江さん(49)は甲子園への思いの深さを実感した。

 頂点まで残り5試合。「ぼくが行くつもりです。山口にも経験してほしいけど、あのマウンドはだれにも渡したくないです」と、ともに大阪大会で投げてきた山口裕次郎(3年)に申し訳なさそうに笑った。あこがれ続けた甲子園。寺島は記憶に残る左腕になった。【堀まどか】