室蘭地区は北海道栄が春の地区予選で敗れた鵡川に2-0で雪辱し、3季ぶりの道大会進出を決めた。先発のエース北村悠貴(3年)が鵡川打線から自己最多の13奪三振、3安打完封と好投し勝利に導いた。打線も春は完封された鵡川エース半田を攻略。昨秋、今春と2連敗していたライバルを下しての南大会進出となった。

 北海道栄がどん底からはい上がった。勝利の中心にいたのは4番でエースで主将の北村だ。鵡川打線から自己最多の13三振を奪い、自己最速タイの140キロもマーク。9回は3者連続空振り三振で締め、跳び上がった拍子にオレンジの帽子が宙に舞った。「どうしても勝ちたかったから体が自然と動いちゃいました」と喜びを、全身で表した。

 昨秋、今春と鵡川に敗れた。今夏の大会前に読んだ新聞の記事に鵡川エース半田の意気込みが紹介されていた。「“2度あることは3度ある”というコメントを見て火が付いた」。この日は渡辺伸一監督(45)が試合中に捕手の岩渕に変化球を増やすよう提案したが、聞かなかった。直球で押す気持ちの投球で、鵡川ししゃも打線をねじ伏せた。

 北村が主将就任後、これが最初で最後の道大会になる。春は鵡川に0-1の9回サヨナラ負け。走者を背負った際に安定感が落ちると見た渡辺監督は、1つだけアドバイスした。「自分を信じて投げろ。コースをつけばお前なら絶対打たれない」。迷い始めていた大黒柱にとって、この言葉は心のよりどころとなった。

 打線も徹底した半田対策を施し援護した。春の敗退後、打撃マシンを通常より4メートル近づけ、半田の武器である外角の高速スライダーをひたすら打ち込んだ。2回に決勝の適時二塁打を放った7番山田陽介(3年)は、今夏初めてレギュラーになり、これが公式戦初打点だった。「春まではベンチにいるだけで北村を助けられなかった。だから、どうしても打ちたかった」。みんなの思いが結実した。

 8回の登板前、スタンドから「悠貴、あと2回だ! 頼むぞ」とゲキが飛んだ。「僕は試合に出ている仲間とスタンドの仲間、全員に支えられていると感じた」。部員81人が北村を支え、エースがその期待に応える。三度目の正直でつかんだ南大会は、逆境から得た結束力で、現校名初の夏の甲子園を狙う。【永野高輔】

 ◆現チームでの北海道栄対鵡川 昨年の秋季大会は9月17日の地区3回戦で対戦。北村は4回途中から登板したが、1-2で惜敗した。今年の春季大会は5月19日の地区3回戦で対戦し、8回まで北海道栄・北村、鵡川・半田の両エースの投げ合いで互いに無失点も、9回無死満塁で北村が鵡川5番平山に左越え適時打を打たれサヨナラ負けを喫した。