南北で昨年夏の甲子園出場校が、そろって道大会出場を決めた。札幌地区では、甲子園準優勝の北海が5本塁打と長打攻勢で札幌南を下し、3年連続71度目の南大会進出を決めた。昨秋、今春は地区予選で敗退しており、3季ぶりの道大会出場で、3年連続の甲子園を狙う。空知地区では昨夏甲子園に初出場したクラークが3-0で岩見沢農を下し、2度目の北大会代表切符をつかんだ。

 3-0の9回表2死。岩見沢農の最後の打者が打ち上げた内野飛球を追って、7回表から一塁守備に入っていたクラークのエース市戸優華(3年)は、笑顔で捕球体勢に入った。2年連続の北大会進出が決まる打球をグラブに収めると、くしゃくしゃな顔でバンザイした。「勝ちだけにこだわっていたので、うれしい」と顔を紅潮させた。

 5回まで0-0。重苦しい空気を払ったのは、腰山拓斗捕手(3年)だった。1年秋に愛知の高校から転入。高野連の規定で1年間公式戦に出られなかった。昨夏の甲子園は練習補助。今春から出場解禁になったが、この夏が甲子園につながる最初で最後の大会だ。「負けられなかった」。6回裏2死一、二塁。左中間へ2点適時二塁打。8回の犠飛と合わせチームの全3打点を挙げた。

 愛知から駆けつけた父高敏さん(40)は「前の学校が合わず『もう野球はしたくない』とまで言った子が、こんなに楽しそうにプレーしている。感無量です」と涙ぐんだ。大会3日前、息子は電話越しに「この学校に入れてくれた父さんを、必ず甲子園に連れて行く」と誓っていた。

 先発した市戸は昨夏の甲子園で登板したが打者1人で降板。1ストライクも取れず四球だった。「自分の投球が全くできず4球だけ。忘れ物を取りに行く」と執念を燃やす。この日は、6回3安打無失点。佐々木啓司監督(61)は「空知地区で(他校からマークされるため)うちは丸裸。2年連続地区を突破した選手をほめたい」とほほえんだ。

 春には1台約130万円の最新鋭打撃マシンが導入された。「夜はマシンの取り合い。もっと打ち込んで、甲子園に行きます」と主将の平野冬馬一塁手(3年)。苦しみながら勝ち取った北大会切符を、2年連続の聖地につなげる。【中島洋尚】