北北海道大会が開幕。武修館が遠軽に11-9で逆転勝ちし、甲子園初出場の14年以来の白星を飾った。5回に左手に死球を受けた4番石橋翔右翼手(2年)が、同点の8回に一時勝ち越しとなる左越え3ランを放った。その裏、8-9と逆転された後に、今度はリリーフで登板。無失点に抑え、9回の再逆転を呼び込んだ。

 武修館の“食わず嫌い王”石橋がほえた。2点リードの9回2死三塁。最後の打者を三振で仕留めると大きくガッツポーズした。逆転された直後、8-9の2死一、二塁のピンチからリリーフ。最後まで無失点で投げ切った。取って取られての両チーム計27安打20点の打撃戦を、最後にきっちり締めた。

 土壇場で見せた。同点の8回2死一、二塁。ど真ん中の直球をフルスイングし、一時勝ち越しとなる左越え3ランを放った。「まずは1本打てれば良いと思った」。5回には左手に死球を受け、激痛でうずくまった。登板前には足がつり、投球にも影響が出た。だが「試合中に気にしてられない」とアドレナリン全開。打って投げての大車輪の活躍を見せた。

 厚岸町出身で実家はカキの養殖を営む。町を代表する名産だが、石橋は「見た目がちょっと…」と避けてきた。父靖浩さん(47)は「1度も食べたことないのに嫌いなんです」と苦笑い。本人は食べられないが、両親は学校祭や激励会などでカキ約100個を差し入れする。小林正人監督(29)は「みんなでほおばっています」。厳しい練習の合間のオイスターパーティーは、ナインにとって癒やしの時間になっている。

 栄養たっぷりのカキのように、成長し続けている。靖浩さんは「武修館に入ってからすごく変わりました」と驚く。登校時には校門でほかの生徒に元気良くあいさつ。下宿先では掃除、食事の準備など率先して雑用をする。小林監督は「日常生活がしっかりしてる。大事な時にやってくれる」と、あえて最も緊張感のある場面で送り出した。

 3年ぶりの甲子園に向け接戦を制した。前回出場時はテレビ観戦していた石橋は「3年生と野球をできることがうれしい。次も楽しんでやりたい」。強い心臓を持つ2年生4番が投打で躍動する。【西塚祐司】