北北海道大会で、98年以来の甲子園を狙う滝川西が、2日がかりの激闘を劇的勝利で制した。旭川実との前日16日の降雨ノーゲームに続く再試合は延長11回、2-1の逆転サヨナラ勝ち。同点に追いついた後の1死満塁、代打出場の背番号16、渡部葵外野手(3年)が公式戦初安打となる殊勲の右前適時打で決着をつけた。

 旭川実の亀田主将は涙を拭き、ぼうぜんとするエース稲原の肩にそっと手をやった。スタンドへ最後のあいさつに導いた。捕手として、11回裏1死一、二塁から救援した主戦を懸命にリードした。逆転を許し、甲子園の夢はついえた。「自分たちの野球ができなかった。最後は気持ちで負けた」と唇をかみしめた。

 釧路市出身の亀田は4きょうだいの次男。2学年上の兄健弥さん(19)は地元の武修館の二塁手だった。兄をきっかけに野球を始めた亀田は旭川実に進学。互いに別々の高校で甲子園を目指し、15年夏に北大会準決勝で戦ったこともあった。兄弟の会話は野球ばかりだ。

 2つ下の妹織音(しおん)さん(15)は、今春創部した札幌新陽女子硬式野球部の投手。高校進学時、迷っている妹に「離れた場所で新しい人たちに出会うのもいい」と、亀田が背中を押した。今年の正月、キャッチボールをして、投げ方のアドバイスを送ったという。

 この日、弟悠聖くん(4)を含め家族全員の声援を受けた。4きょうだいのうち、上の3人は「野球」を共通項に、より結びついている。滝川西戦を前に「絶対甲子園に行く」と、兄に誓った約束を果たせなかった。「家族には本当に感謝している」。亀田は柔和な表情で夏を終えた。【浅水友輝】