<君の夏は。>

 東海大相模(神奈川)の父子鷹の夏が終わった。門馬大(ひろ)三塁手(3年)は試合後、グラウンドでうずくまり、しばらく起き上がれなかった。「優勝してみんなで甲子園に行きたかった。ミスが出て負けてしまって悔しいです」。

 4回裏の守備。2死一、三塁の場面だった。横浜の4番増田の打った打球が、門馬が守る三塁ベース後方に高々と上がった。「打った瞬間は分かったんですが、打球を見失ってしまって…。あそこを抑えていれば、また流れが変わっていたかもしれない。悔やまれます」。適時二塁打となり、リードを4点に広げられた。父門馬敬治監督(47)は、5回裏の守備から息子をベンチに下げた。「一選手として、力を発揮させられず残念です」と振り返った。

 高校入学を機に、親子ではなく監督と選手の関係になった。大は「覚悟を決めて入ったので、戸惑いはありませんでした」と語るが、母七美枝さん(49)は「1、2年の頃は、話しかけてももらえていなかった。距離が縮まったのは、本当に最後の夏になってからだと思います」と話した。

 今大会期間中は、練習後に父が自らが打撃投手を務めた。門馬監督は「家族は関係なく、東海大相模のために戦った夏でした」と語ったが、一選手として、最後の夏、息子に期待していたのは事実だった。

 同校では、原貢監督(享年78)と原辰徳内野手(59=前巨人監督)親子が、74年から3年連続夏の甲子園に出場した。再び、父子鷹として全国の舞台に立つことはできなかった。

 今後は妹の花マネジャー(1年)が監督と選手たちを支えていく。大は「苦しいこともあったけど、監督と選手、そして親子で、人より特別で幸せな2年半でした」と感慨深げ。「勉強して、自分も高校野球の監督になりたいです」。父子の夢は、確実に引き継がれていった。【太田皐介】