頂点まで、あと1勝だ。広陵にとっては、準優勝だった07年以来の決勝。中村は「10年前の借りを返したい。そのためにやってきた。何が何でも勝ちたい」。チームはこれまで「きれいに野球をしすぎ」と言われ、実力を出し切れずにいた。今夏の広島大会では、移動バスの中で45分にまとめられた07年の映像が流されていた。ガッツポーズにヘッドスライディング…。泥臭く勝利を追う広陵野球を感じ取っていた中村は、5回無死一、三塁で相手のスクイズが小フライとなるとダイビングキャッチ。併殺を完成させ、最大のピンチを切り抜けた。

 「今のままで満足したくないので明日も頑張りたい。誰にも追いつけないような記録を作りたい」

 大会最多19安打にも、あと「3」。優勝も、打撃部門の記録ジャックも。99年の歴史の中で、他の球児ができなかった「もう一暴れ」を狙っている。【磯綾乃】

 ◆中村奨成 大野東小1年で野球を始め、3年から捕手。中学は「大野シニア」に所属し、3年時に県8強。広陵では1年春の県大会で背番号20ながらレギュラー。1年夏から背番号2。趣味は音楽鑑賞。50メートル6秒0。遠投120メートル。