聖地に新たな伝説が刻まれた。今大会NO・1スラッガーの広陵(広島)中村奨成捕手(3年)が「清原超え」の1大会最多6本塁打を記録した。天理(奈良)との準決勝で1回に先制2ラン、5回に同点ソロ。85年夏に清原和博(PL学園)がマークした1大会5本塁打を一気に抜き、チームを10年ぶりの決勝に導いた。中村はこの日4安打7打点の活躍で、1大会個人17打点、同38塁打も最多記録となった。広陵は今日23日、ともに初優勝を懸けて花咲徳栄(埼玉)と対戦する。

 甲子園の空に、歴史を塗り替える2本の放物線が描かれた。まずは初回1死二塁。中村が拍手に包まれながら第1打席を迎えた。声援があっという間に、歓声とどよめきに変わる。初球を仕留め、バックスクリーンへ豪快な先制2ランだ。ダイヤモンドを回りながら、心の中で「並んだな」と思った。“怪物”と呼ばれた、あの清原が記録した1大会5アーチに、ファーストスイングで肩を並べた。2発目は1点を追う5回。3球目のシュートを捉え、左中間へ同点ソロ。劣勢の流れを変えた1発が、32年ぶりの記録更新となる清原超えのアーチとなった。

 「不思議な感覚。すごい場所なんだなと思います。球児の憧れの場所に立てているだけでもありがたい。結果が出ているのは甲子園の力だと思います」

 2発を含め、5打数4安打7打点。中井哲之監督(55)が「台風みたい」と表現した大暴れの裏には“新怪物”だからこその悔しさがあった。20日の準々決勝・仙台育英(宮城)戦。2安打ながらノーアーチで、甲子園での連続試合本塁打が「3」でストップ。試合後に岩本淳太主将(3年)に「途切れてもうた」と漏らしていた。その鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、1大会6本塁打、同17打点、同38塁打と、一気に3つの新記録を樹立した。