高校通算111本塁打の早実・清宮幸太郎内野手(3年)が9月22日、同校で会見を開きプロ志望を表明した。同日、阪神が1位指名を明言するなど早くもプロ側が動き始めた。また10月2日にプロ10球団と面談。果たして何球団が1位指名するのか。注目のドラフト会議は10月26日に行われる。同会議までの清宮及びプロ側の動きを追う。

10・2 プロと面談

指名を検討するプロ球団との面談がスタート。この日は広島、日本ハムを除く10球団と両親も同席し面談。広島は指名回避することが明らかに。日本ハムは日程が合わず後日、面談することになった。

早実・清宮幸太郎との面談に来た巨人スカウト。左から岡崎スカウト部長、石井球団社長、鹿取GM(撮影・鈴木正人)
早実・清宮幸太郎との面談に来た巨人スカウト。左から岡崎スカウト部長、石井球団社長、鹿取GM(撮影・鈴木正人)
早実・清宮幸太郎との面談を終え笑顔で引き揚げる西武渡辺SD(撮影・鈴木正人)
早実・清宮幸太郎との面談を終え笑顔で引き揚げる西武渡辺SD(撮影・鈴木正人)
早実・清宮幸太郎との面談に来たソフトバンクのスカウト。左から福山アマスカウトチーフ補佐、小川育成編成部長兼スカウト室長、山本スカウト、三笠球団統括本部副本部長(撮影・鈴木正人)
早実・清宮幸太郎との面談に来たソフトバンクのスカウト。左から福山アマスカウトチーフ補佐、小川育成編成部長兼スカウト室長、山本スカウト、三笠球団統括本部副本部長(撮影・鈴木正人)

9・22 プロ志望を表明

学校で会見を開き、プロ志望届を提出することを表明。「私、清宮幸太郎はプロ野球志望届を提出することに決めました。プロの世界の厳しさは十分理解しているつもりですが、目の前の目標を1つ1つクリアしていきたいと思っています」

プロ志望届を提出する意志を表明する早実・清宮(撮影・江口和貴)
プロ志望届を提出する意志を表明する早実・清宮(撮影・江口和貴)

10・2 10球団が清宮と面談

【阪神】

明確にドラフト1位指名の意思を伝えた。佐野アマスカウト統括、畑山チーフスカウト、永吉ディレクターの3人が出席。佐野アマスカウト統括は「1位で指名させていただきます、とお伝えしました」と内容の一端を明かした。球団は清宮がプロ入りを表明した9月22日に、すぐさま1位指名を公表済み。この日は「超変革」を進める金本阪神の育成方法などを訴えかけたとみられる。

【ソフトバンク】

小川一夫育成・編成部長兼スカウト室長らが清宮と面談を行った。育成力、環境面の充実を伝えた。60億円を投資し、昨年完成した福岡・筑後市のファーム施設を説明したパンフレットを手渡した。また、iPad(アイパッド)を使って、選手の動画などが即再生される球団独自のアプリも見せた。清宮からは質問はなかったが、同じ左の長距離砲柳田も1軍定着まで数年かかった話に熱心に聞き入っていたという。三笠球団統括本部本部長は「王球団会長も30本塁打を打ったのは、4年目から。野球に取り組むのにはいい環境の中でやれる」と話した。ポスティングについては従来通り認めるつもりはない。清宮が目標とする868本塁打超えは、王球団会長が愛情を注いできたソフトバンクで打ってほしいという考えだ。

【西武】

門外不出の「新人プログラム」で、育成の西武をアピール。秋山、清原、中村ら、伝統的に高卒の大砲の育成に成功している。清宮に資料を提示し、レジェンドたちの成長過程を説明した。父克幸氏からは、老朽化した施設面の改善などについて聞かれた。渡辺SDは「今年の選手の目玉というか、実力的には一番の選手だと評価しています」と話していた。

【楽天】

1位指名明言は避けたが、トップクラスの評価は変わらない。長島スカウト部長、後関、沖原両スカウトの3人が出席。同じ高卒の松井裕、オコエ、藤平らの名前を挙げて育成方針を説明した。さらに天然芝のグラウンドなどチームの魅力もアピール。同部長は「天然芝いいですね、という話も出た。球場とか環境は良く思ってくれているのかな。高い評価をしています。ご縁があったら」と話した。

【オリックス】

トップを切って清宮との面談に臨んだ。清宮と対面した森川球団本部長補佐、中川アマスカウトグループ長に代わり、大阪で長村編成部長が「こちらから育成方針、環境などを話しました。清宮君から質問はなく、ポスティングの話などはしていません」と面談の内容を説明した。JR東日本・田嶋大樹(21)立命大・東克樹(4年)ら即戦力投手の補強が基本方針ながら、清宮にも注目をしている。

【ロッテ】

清宮用の特別冊子を用意し、熱意を伝えた。同じ高卒野手で活躍する福浦、今江(現楽天)、西岡(現阪神)の活躍を例に構成したもの。永野チーフスカウトは「3、4年目までに足掛かりをつかんで、大ブレークした話をした」と説明した。10球団面談の大トリだったが「相当疲れていたと思いますが、リラックスした様子で聞いてくれた」と話していた。

【DeNA】

和製大砲を輩出した実績をアピール。同じ高卒野手として、09年ドラフト1位で入団した筒香は、1年目から実戦経験を積み上げた。2軍で102試合に出場しチーム最多となる451打席に立ち、ひたすらプロの球に慣れさせた。打率2割8分9厘、26本塁打、88打点と数字を残し、1軍で最後の3試合に出場。初本塁打をマークするなど、実戦から成長を促した。DeNAは今季も細川や網谷ら有望な若手を2軍で多く起用した。以前から高田GMは「筒香の後のことを考えると清宮。日本人ではそうそう出てこない。だから清宮というの(名前)が出てくる」と、早くから特Aランクとして評価していた。1位指名を基本方針として固めている。

【巨人】

言葉と姿勢で高評価を伝えた。この日、面談した球団では唯一、球団幹部として石井球団社長も同席し、鹿取GM、岡崎スカウト部長、福王東日本統括スカウトとともに逸材と対面した。岡崎スカウト部長は「清宮選手を巨人としては高く評価していると伝えました」と明かした。約30分の話し合いで、清宮サイドからは施設など環境面についての質問が主だったという。同スカウト部長は怪物のグラウンド外での立ち居振る舞いを目の当たりにし「今までテレビとか球場で遠くから見ていたけど、1メートルくらいで見るとすごく雰囲気があるし、好青年だった。聡明(そうめい)な感じがした。自分が高校生の時を考えるとすごくしっかりしてる」と感じた。「球団としてはすごく高く評価していると伝えるのが今回の趣旨。(具体的な育成方などは)縁があれば後の話」と良縁を願うように話した。

【中日】

中田スカウト部長が熱弁をふるった。資料はなし。具体的な育成プランよりも熱意を前面に出した。「(低迷する)チームの現状から、どうしても必要。彼は厳しい練習を好んでいる。厳しい練習の中ではい上がってくる選手は精神面の強さを持っている。『うってつけは君だよ』と伝えました」。練習で鍛え上げる中日らしい表現でシンプルに訴えた。ポスティングを事実上容認する構えだが、メジャー移籍に関する話題は出なかった。

【ヤクルト】

山田育成術でアピール。橿渕スカウトデスクと酒井スカウトが面談に出席。清宮から環境面についての質問を受け、戸田の室内練習場を14年に改修し24時間練習が行えると説明した。また育成方針では2年連続トリプルスリーの山田の事例を紹介。成長させ、入団4年目で日本人の右打者歴代最多193安打を記録した実績を強調した。橿渕スカウトデスクは「山田を引き合いに出して説明しました。2軍での打席数とか全部数字を出してた」とした。また面談で話題にはならなかったが、海外挑戦についても「過去の歴史を見てもらえば、おわかりになると話そうと思った」と石井一、岩村、青木らがポスティングシステムで移籍した実績があるとした。


プロ12球団の動き(10月2日現在)

【広島=即戦力投手軸】

10月2日、清宮の指名を回避することを明らかにした。同日スタートした清宮との面談に、加わらなかった。球団幹部は「行かないということはそういうこと。打撃は素晴らしいものがあるが、うちのスタイルには合わない」と説明。魅力的な長打力も、現場は走力のある選手を要望しているという。清宮の指名回避を明言したのは、広島が初めて。ドラフト1位候補はヤマハ・鈴木博志投手(20=磐田東)、立命館大・東克樹(4年)ら即戦力投手、地元の広陵・中村奨成捕手(3年)の名前が挙がる

【阪神=1位指名明言】

四藤球団社長が9月22日、清宮の会見直後に兵庫県西宮市の球団事務所で取材に応じ、プロ入りを表明した早実・清宮のドラフト1位指名を明言。「くじ引きになると思うが、1位で指名させてもらいます。ぜひとも。ずばぬけた存在なので。将来性、スケールの大きさ。大砲は大きな補強ポイントなので」。すでに金本監督とも話し合い、1位指名で意見は一致しているという。阪神は15年の明大・高山、16年の白鴎大・大山に続き、3年連続で野手を1位指名することが確実になった。

【ソフトバンク=特A評価】

早実の先輩でもある王貞治球団会長が23日、プロ志望を表明した清宮に熱烈なラブコールを送った。「欲しいね。打者としても技術的なものも、ネームバリューもあるし、あれで主将もやってね。18歳ではあるけれど、チームにすんなり入っていけそうな雰囲気がある」と絶賛。自身の持つ868本塁打を目標にしていると聞き「そういう目標を持っているのはたいしたもの。我々にはそんな目標はなかった。頑張ってほしいね」と感心した。ドラフトでの競合は必至な状況に「何球団?」と逆取材。過去最多8球団を超える可能性もあると聞き、驚いた表情をみせた。くじについては「もちろん工藤監督の方がくじ運がいいからね。そんなんで外したら、一生言われる」と、現在2連勝中の工藤監督に託す考えだ。後藤球団社長は「ギリギリまで考え抜く」としながらも「(王球団会長は)同窓の先輩でもあるし、強い関心をお持ちでしょうし、魅力的」と清宮が1位候補であることを明言

【西武=特A評価】

渡辺久信SDが清宮のプロ志望表明を歓迎。球団を通じて「プロ野球界として良かったと思う。これで、ドラフトに集中できます」とコメント。20日に行われた編成会議後には「清宮君は一番ぐらいな評価をしている」と特Aランクとして高く評価した。表明を受け、即戦力投手も含めた1位指名選手の絞り込みを進めていく方針

【楽天】

清宮の育成について、球団側は前向きな姿勢だ。立花球団社長は最終的な決定は先とした上で「うちは外国人3選手が出ている現状を見ても、日本人のホームラン打者を育てることが重要だと思っている。当然、候補」と以前話しており、ウィーラー、ペゲーロ、アマダーに次ぐ存在として評価は高い

【オリックス=指名回避か】

清宮については実力はもちろん、人気や話題性も魅力的だが、指名回避の可能性が高まっている。福良監督が「評価は高いと思うよ。入る球団によっては1年目から活躍できると思う」と話すように、球団も野手ではトップクラスとの評価を与えている。ただチーム状況を考慮して、1位を含む上位指名は投手を優先する方針を既に確認

【日本ハム=最上位候補】

プロ入りを決断した清宮に誠心誠意を尽くす。早くからドラフト1位の最上位候補としてリストアップしてきた。栗山監督は「野球好きな人間として、彼の道は正しいと思います」とプロ入り表明を喜び、将来的にはメジャーで活躍することを目指す清宮の野望を「志がはっきりとしている。本当に頑張れば、手の届く目標。絶対に無理とかない。志がなければ(我々は)動かないから」。入団の暁には最大限のサポートをすることを約束

【ロッテ=1位候補】

プロ入りを表明した清宮について、林球団本部長が1位指名候補であることを明言。最終決定は先とした上で「もし獲得にいくのであれば、1位でいかないといけない」と話した。今夏の西東京大会を視察。「非常に魅力的。スイングが速く、リストも柔らかい。国民的スターになる素養を持っている」と評価

【DeNA=特Aランク】

23日、高田GMがプロ入りを表明した清宮に、変わらぬ高い評価を口にした。球団として1位指名をする方針を固めている中で、明言こそ避けたが表明を「大歓迎」とした。「筒香の後のことを考えると清宮。日本人でそうそう出てこない。だから清宮というの(名前)が出てくる。でも決めるのは最後の最後」。将来筒香に代わる和製大砲として特Aの評価をしながらも、慎重に語った

【巨人=1位最有力候補】

清宮が1位指名の最有力候補。鹿取GMは「どの球団も1位でいくでしょう。またスカウト会議があるので方針を決めていきたい」と話した。清宮が厳しい指導で成長を求めていることに「進行形でやっています」とプランも熟慮中。高橋監督は昨オフに「東京6大学で僕のホームランの記録(23本)を抜けるか、見てみたい」と発言し、進路を注目していた。プロ表明した怪物に「抜かれなくて良かった」と笑顔でジョーク。「実力も魅力もずばぬけている。会見の発言とかを見ても、魅力のある選手」と絶賛していた

【中日=1位候補】

清宮がプロ表明し、松永編成部部長は「1位候補であることは間違いない」と強調した。これまでも1位筆頭候補として評価。白井オーナーも獲得を厳命している。獲得となればフィーバーが予想されるが、同編成部部長は「山田恵輔を専属広報につけるか!」と秘策? を披露。山田広報部部長は清宮の父克幸氏と早大ラグビー部の同期。獲得した場合でも、清宮家にとって安心な環境も用意できる

【ヤクルト=1位指名確実】

清宮に地の利をアピールする。衣笠球団社長はかねがね「彼には神宮が似合う」とコメント。高校時代に本塁打を量産した本拠地神宮球場ならば、のびのびとプレーできるとする。1位指名が確実視され、獲得へ抽選覚悟で挑む見込み


清宮プロフィル

1999年(平11)5月25日生まれ、東京都出身。早実初等部3年の時に「オール麻布」で野球を始めた。東京北砂リトルに所属した12年は、リトルリーグ世界選手権で4番エースとして5試合3本塁打を放ち優勝。調布シニアでは一塁手。早実では1年春からレギュラー。甲子園には1年夏と3年春に出場。1年夏は2本塁打を放ち4強入りし、高校日本代表としてU18W杯出場。主将で出場した今春のセンバツは2回戦で東海大福岡に敗戦。今夏は2度目のU18W杯に出場し、高校日本代表の主将を務めた。高校通算111本塁打。高校公式戦の通算成績は70試合で247打数100安打(打率4割5厘)、29本塁打、95打点。184センチ、101キロ。右投げ左打ち。家族は両親と弟。父克幸さんはラグビーのヤマハ発動機監督。