21世紀枠で59年ぶりに出場した膳所(滋賀)は、初出場の日本航空石川に大敗も、データ野球の新たな可能性を示した。

 膳所の左翼手・星田のグラブを日本航空石川・上田の打球が、かすめていった。4回1死一塁で左中間へ強烈な打球。普通のシフトなら左中間を割るような当たりだったが、星田は落下点に入っていた。そこまではデータ通り。ただ、風、相手の力、一瞬のちゅうちょに、考え抜いた戦術は崩された。「センターが行くかなと思ってしまった。声かけができなかった。今まで見たことのないような打球でした」と悔やんだ。

 甲子園を沸かせた。初回2死二塁で上田を迎え、外野3人は両翼をあけて中堅に寄った。二塁後方で遊撃手が打球をさばき、失点を防いだ。大胆な守備で翻弄(ほんろう)したが、4回の相手主砲、上田の一打が分岐点になった。

 21世紀枠で吉報を受け、喜びと同時に責任も背負った。「ゲームをつぶしたら…と怖さもありました」と上品充朗監督(48)は明かす。大舞台の完敗は21世紀枠存続論につながるのでは、とまで思いつめた末に「膳所の野球をやるしかない」と発想を転換。昨春立ち上げたデータ班が対戦校を研究し、対策を徹底。今センバツでは甲子園特有の浜風も分析した。この日も何度もヒットかと思われた打球が、シフトの網にかかった。相手の中村隆監督(33)も「予想以上。すごい、負けたと思った。これだけ正確なポジションを取れるんだと思いました」と感服するほどだった。

 全国1勝には届かなかったが、上品監督は言った。「一生懸命取り組んだ結果でも、力が及ばないことがある。それを知るのも勉強」。胸を張れる、収穫の春になった。【堀まどか】