聖光学院(福島)が「脱日本一」を掲げて、投打の勢いを復活させた。決勝は18点を奪う圧勝劇で、6季連続の県制覇。2回裏に四球や失策、暴投の相手ミスを逃さず、4安打で一挙11得点を奪った。センバツで東海大相模(神奈川)に大敗して以降、雰囲気も重く、練習試合でも勝てない日々。斎藤智也監督(54)は「ここまでたどり着けるとは思っていなかったので、キツネにつままれた感じ。野手がぐずついた雰囲気を変えてくれた。挑戦者魂を呼び戻してきたね」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 昨秋の東北大会で優勝し「日本一」を掲げてきたが、大きな挫折が失望感になった。エース衛藤慎也(3年)ら主力3投手も故障で離脱。「恥ずかしくない試合を」という結果至上主義が、重圧となった。

 今大会初戦も消化不良の試合だった。矢吹栄希主将(3年)を中心に「日本一」の目標を捨てた。昨秋に講演会で伝授された居酒屋界の日本一を目指す「居酒屋てっぺん」の朝礼。「俺たちハッピー」「お前ら最高」など、大声を出して互いを高め合い、夢を語り合って結束を高めてきた「儀式」もやめた。「大事なのは、勇ましく思い切りやることだと思えた」と矢吹。斎藤監督の「負けたら、自然の多いところに連れていって、スイッチを入れ直そうかなと計画していた」という不安も、杞憂(きゆう)に終わった。

 東北大会では衛藤もメンバー入りする。川口堅(3年)、須藤翔(2年)も投手の新戦力に加わった。本盗や、セーフティースクイズなど聖光らしい得点も復活の指標。苦しんだ分だけ強くなる。【鎌田直秀】