高校野球特集の第1回は、日刊スポーツ記者が全国の有望投手にスポットを当てる「ピカイチ投手編」。最速151キロを誇る倉敷商(岡山)の引地秀一郎投手(3年)は自分超えに自信を示した。1年時、2年時と夏の大会で自己最速を更新しており、最後の夏にも照準を合わせてきた。6年ぶりの夏の甲子園出場はドラフト上位候補右腕にかかっている。

 6月下旬に行われたシート打撃。ネット裏のスピードガンは安定して145キロ前後を表示した。速さだけではない。きれいなスピンのフォーシームはほとんどバットの上を通過した。

 「どうやったら指にかかるか考えてきた。今は8~9割の確率で狙ったように投げられる。空振りがとれる直球になったと思います」。シュート回転する傾向があったので、握りの軸を少しずらし、縦回転に。磨きをかけ続けた自慢の速球で、最後の夏に向かう。

 1年夏に初めて140キロ台を出し、2年夏に現在の最速151キロを計測。自己最速更新にも自信を深める。メジャー通算324勝で、あこがれのノーラン・ライアンのように圧倒的な投球が理想。「本番になると燃えます。注目されると気持ちが上がり、持っている以上の力が出るので」と待ち切れない様子だ。

 春は混戦模様の岡山を制した。ただ決勝の関西戦には登板せず、左腕・小引智真(3年)らが活躍。まだ高校で優勝投手の経験はない。今年1月にOBの星野仙一氏が70歳で他界。亡くなって最初の夏を迎えるが、森光淳郎監督(48)は大先輩との比較は避け「背番号1をつけた歴代の先輩のように、自覚と責任と期待を背負って投げてほしい」と、勝てる投手への成長を期待する。

 試合、練習問わず、プロのスカウトがひっきりなしに訪れる。小学生の頃から「甲子園に出てドラフト上位でプロ入り」と描いてきた。“岡山のライアン”は自らの手で青写真を現実にするつもりだ。【柏原誠】

 ◆引地秀一郎(ひきじ・しゅういちろう)2000年(平12)6月3日、岡山市生まれ。鯉山小1年から野球を始め、高松中野球部(軟式)で中国大会準優勝、全国大会出場。倉敷商では1年春からベンチ入り。2年春から背番号1を背負い、昨夏は3回戦敗退。188センチ、85キロ。右投げ右打ち。両親と弟3人。