就任5カ月の新米監督が緊張感から解放された。元ソフトバンクの大産大付・田上秀則監督(38)は「疲れた。点差があっても何が起こるか分からないのが高校野球だから」と振り返った。高槻北を10-3で下しコールド発進。監督就任以降、初めての夏。しかも開幕戦。プロで470試合に出場した田上監督でも気が張り詰めていた。

 鍛えてきた打線が火を噴いた。初回に2点を先制されても動じなかった。「10点くらいは取れると思っていた」。1回に1点を返すと、2回に相手投手の乱調もあって3点を奪い逆転。3回までに7安打7得点とたたみかけた。田上監督はソフトバンク時代の09年に26本塁打。その打棒を受け継ぐように教え子が快音を連ね12安打で8回コールド勝ち。「打撃でいいものを持っている子が多い。目指しているところのレベルには来ている」とたたえた。

 2回に勝ち越し二塁打を放つなど3安打2打点の1番松本泰吾内野手(3年)は「よく監督がバッティングを見せてくれる。それが全部柵越えくらいの勢いで。元プロ選手は全然違う」。実演だけでなく、練習後は各選手に個別アドバイスが日々送られる。打力アップの成果を早くもみせた。

 田上監督は現役引退翌年の14年に学生野球資格の研修を受けた。同資格導入後では府内初のNPB経験監督だ。「元プロ」が話題になるが「そこは関係ない。生徒には感覚で伝えるとうまくいかず、難しいこともある」と語る。目標は聖地。「夏は負けたら終わり。相手がどこだろうがやることは同じ」。母校を初の夏の甲子園へ。豪快に挑戦は幕を開けた。【中野椋】

 ◆田上秀則(たのうえ・ひでのり)1980年(昭55)3月20日、大阪市生まれ。大産大付から九州共立大に進学し、4年秋にシーズン9本塁打のリーグ新記録をマーク。01年ドラフト3巡目で中日に入団。05年オフに中日を自由契約となり、06年からソフトバンクに。正捕手に定着した09年には26本塁打80打点の活躍でベストナインにも輝いた。13年に現役引退。右投げ右打ち。