陽川先輩、やりました! 第100回全国高校野球選手権の地方大会が各地で行われ、北大阪では金光大阪が牧野に苦戦しながらも8回コールドで逆転勝ちを決めた。7回、決勝3ランの中辻開斗外野手(3年)は、トラの4番に成長した陽川尚将内野手(26)のメンタル術を参考に5打点の活躍だった。

 07年以来の夏の甲子園出場を目指す金光大阪が、苦しみながらも初戦を突破した。牧野に先制され、6回まで1-1。最後は8回コールドで振り切ったが、横井一裕監督(43)は開口一番「しんどかったです」と、疲れきっていた。

 前日まで降り続いた雨の影響で、グラウンドがぬかるみ、3時間以上も試合開始が遅れた。気持ちと体の準備が難しい状況だったが、横井監督が常に選手に言い聞かせていたことが、生きた。それは、OBで現在は阪神の4番にまで成長した陽川の言動だった。

 高校時代の陽川を指導した横井監督は言う。「陽川は、やんちゃそうに見えるが、情緒が安定していた。生徒たちにも、そんな陽川の精神面を学ぶように言っている」。プロで活躍する先輩の原点は、技術の鍛錬だけではなかった。逆境に動じない精神面の強さ。心のタフさが成長を促していた。

 焦る気持ちを抑えながら迎えた7回、ようやく勝機がきた。陽川先輩を「あこがれの選手」と慕う2番中辻が2死一、二塁から左越えに勝ち越し3ランを運んだ。「無心でした。(バットの)真芯に当たって感覚がなかった」。練習試合を含めて自身3本目の本塁打が、決勝弾になった。勢いづいた打線は、8回にも集中打で得点を重ね、最後は満塁で、またも中辻が中越え二塁打を放ち、サヨナラでコールド勝ちを決めた。

 学校は高槻市内にあり、大阪府北部地震に見舞われた。当たり前の日常が激変する中、臨んだ初戦。「予想を超えるくらいうまくいかなかった」と横井監督は苦笑するが、選手に伝え続けた「陽川のメンタル」が逆転勝利のエキスになった。【鶴屋健太】