神奈川から最初に全国大会に出場した横浜商は、古豪復活を狙う。選手でも“Y校”の重みを知る小嶋一紀監督(45)は、指導者として初めての夏を迎える。副部長と部長を計4年務め、昨夏の県大会終了後、監督に就任。「母校の指導ができるのは、格別です。プレッシャーを感じる立場ではない。横浜を倒すことに、変わりはありません」と自然体だ。

 28年前の90年夏、三塁コーチとして聖地を経験している。当時の監督である古屋文雄氏からは「Y校生として、野球人として、しっかりやれよ。頼むぞ」とメッセージを送られた。小嶋監督は「甲子園に行くか、行かないか、というのは大きな違い。その経験をさせてもらった人間なので、次の世代に伝えるのが使命だと思っている」と熱のこもった指導を続ける。

 親子2代に渡ってY校のユニホームを着る選手も多い。稲妻大成主将(3年)も、その1人。小嶋監督と同い年の父・征省さんは、90年夏に右翼手として甲子園で活躍した。子どもの頃、父の勇姿をビデオで見て「こういう人になりたい」と憧れた。当初は強豪私学への進学を考えていたが、中3で見たY校の選手の姿が印象に残った。「甲子園を狙える」と入学を決意。父も喜んでくれた。昨秋には、主将に就任。父は頼れる相談相手だ。アドバイスももらう。部員数は118人と公立では最多で「まとめるのは大変だけど、それが自分の役目。チームを盛り上げて、勝利に貢献したい。なんとしても甲子園に行くという気持ちです」と目標ははっきりしている。

 創部は、神奈川最古の1896年。横浜外国人クラブ「YC&AC」と旧制一高(東大)の試合が行われ、横浜商が全校応援に駆けつけたことがきっかけで、野球部が結成された。交流は現在も続いており、今年6月2日に行われたYC&ACの創立150周年の記念試合に、横浜商OBが参加。さらに現役選手も審判として携わるなど、伝統が受け継がれている。1年生の時、授業で先生から部の成り立ちを聞いたという最速145キロのエース樺田魁投手(3年)は、歴史を知らないチームメートに教えている。「OBの方には感謝している。100回記念大会はチャンス。自分たちの代で、甲子園に行きたい」と意気込む。

 28年ぶり8度目の甲子園で、もう1度歴史をつくる。