<高校野球北埼玉大会:春日部東10-4伊奈学園総合>◇15日◇3回戦◇越谷市民球場

 「チヒロ、早く来て!」。6月21日の夕方、同じ3年生の部員たちに呼ばれ、伊奈学園総合(北埼玉)の杉山千滉マネジャーは「何だろう?」と近づいた。輪がほどけ、中から藤本大輔主将が箱を手に現れた。男子18人が「せーの、いつもありがとう!」。サプライズプレゼントだった。

 箱には大好きなピンク色のグラブが入っていた。目を見開き、手で口を押さえた。「もう何が何だか。頭の中、真っ白でした」。グラブには「ありがとう」と刺しゅうされていた。

 クリスマスには手作りケーキを部員のためにつくる3年生唯一のマネジャー。「一生の記念に残るものをプレゼントしたい」(藤本)と思った18人は部室に潜み作戦を練った。買い食いを我慢し、オーダーメードグラブの資金をためた。

 サプライズの様子は動画撮影しSNSにアップ。12万超の「いいね!」と「感動した」との声が続々届いた。だが、一番感動したのは杉山マネジャーだ。「最後の夏、今まで以上に全力で選手に尽くそうって決めました」。

 仲間との夏は3回戦で終わった。「熱くて一生懸命で格好良くて、みんなは私のヒーロー。この夏は一生の宝物です」。いつかすてきなお母さんになり、子どもに自慢する。ピンクのグラブが、瞬時に青春を思い出させてくれるはずだ。【金子真仁】