関東学園大付エースの高橋勇人投手(3年)は野球断念の危機を乗り越えた。

 準決勝となった昨年覇者の前橋育英戦に先発。相手打線にスライダーを狙われるなど、初回は打者11人の猛攻でいきなり8失点。3回にもさらに2点を失ったところで交代を告げられた。「(1回に)8点も取られて申し訳ない。ボールが甘くなってしまったのが多く、打たれてしまった」。試合後は涙に暮れた。

 188センチの長身右腕。ツーシームやスライダーなどの5種の変化球をコースに決める。そんな大黒柱は2年冬、疲労骨折の悪化で右肘の手術を決断した。医師からは「あと1歩で野球ができなくなる」と言われるほど重傷だった。手術がうまくいかなかったら、もう野球ができないかもしれない。これまで野球一筋だっただけに入院中、不安に駆り立てられた。それでもチームメートの見舞いは立ち向かう勇気が湧いた。羽鳥達郎監督(29)からは「目標を見失うな。夏は投げさせる。冬は夏のことを考えて投げなさい」。このエールは心の支えになった。

 手術は無事成功。早速、下半身強化に着手した。「体がぶれなくなり、制球がよくなりました」。太ももは65センチまでがっしりし、座った拍子にズボンが破れてしまうまでサイズアップ。球速は139キロまで掲示するまでになった。

 この日で高校野球に別れを告げた。「親や先生、仲間にも感謝しています。この先も野球を続けたい。今日の経験を無駄にしてはいけない」。次のステージでこの敗戦を糧にする。