第100回全国高校野球選手権大会で、準優勝した金足農(秋田)の選手らが22日、大阪・守口市内の宿舎で取材に応じ、主将の佐々木大夢(ひろむ)外野手は「秋田県だけでなく全国のみなさんや、甲子園での応援がすごかった。第一に、ありがとうございましたという気持ち。感謝してもしきれない。楽しかったのひと言」と喜びをかみしめた。

 今後の将来についても「就職か進学か、これから考えたい。野球はやりたいですが、選手というよりマネジャーやトレーナーのような形も向いているのかな。支える側にも興味があります」と明かした。決勝後の宿舎ではエース吉田輝星投手(3年)らから「お前のおかげで、ここまで来られた」と伝えられ、主将としての任務を評価された。感無量な瞬間だった。

 1年冬に、コーチから「走り方がおかしいぞ」と声をかけられ、練習を中止して病院に直行。甲状腺の病気「バセドー病」と診断された。医師からは運動禁止を厳命。マネジャーに転身。深夜にトイレに何度も起き、階段の上り下りすら息切れする日々が続いた。一時は野球を諦めかけた時期もあった。

 1日3度の投薬治療を続け、練習に復帰したのは2年の昨秋。「監督、親、引き留めてくれた仲間の支えに感謝です」。努力を重ねて今春に左翼の定位置をつかんだ。現在も完治していなく、1日2度の投薬は続けている。大阪桐蔭(北大阪)との決勝では、3回表に右犠飛で1点目を挙げた。吉田が降板した6回からは、三塁の守備につく万能な面も大舞台で披露した。

 秋田県勢としては15年の第1回大会の秋田中(現秋田)以来、103年ぶりの決勝進出。同校の84年4強も超えた。東北勢初優勝は逃したものの、9人で秋田大会からの全試合を戦い抜いた姿は全国の高校野球ファンを魅了した。佐々木主将は「やりきったし、出し尽くした感じ。誰にも経験できないような夏休みだった」と、笑顔で秋田への帰路についた。