星稜(石川)は5日、指導禁止処分を課していた野球部の林和成監督(43)の処分解除を発表した。

同日昼にナインを校内の会議室に集め、鍋谷正二校長、林監督らが復帰報告をした。その場で謝罪もした。

4月上旬に処分を受けていた林監督は日焼けの抜けた顔で午後に約2カ月ぶりに野球部グラウンドに現れ、会見を開いた。

「多くの方々にご迷惑をおかけしたことをおわびしたい。2カ月時間をいただき、教員生活約20年を反省する日々でした。全国から励ましのお電話やお手紙をいただいた。厳しいご意見も多かった。私のとった行動で、不愉快な思いをさせてしまった。いろいろな方々の思いを受け止めてこれから過ごさないといけない」と神妙な様子で話した。

3月のセンバツ2回戦の習志野(千葉)戦で相手のサイン盗みを疑い、抗議。試合後には敵将に直接抗議に訪れる異例の行動が問題視された。習志野側は否定していた。

この試合に敗退後、学校の許可を得ず週刊誌などの取材を受け、同監督の言い分を主張した記事が掲載された。一連の騒動を受けて、学校側は4月上旬から指導禁止を言い渡していた。

鍋谷校長は復帰を前にした前日4日に、日本高野連や、習志野の校長、保護者会などに謝罪と報告を行った。学校は騒動のあとに3度、習志野と電話連絡をとった。直接謝罪に向かいたい旨を伝えてきたが、遠慮されていたという。今回、習志野側からは激励の言葉があったといい鍋島校長は「このことを忘れず日ごろの教育活動を行っていきたい」と返答したという。

林監督は2カ月間、指導には一切関わらず、試合も見なかった。4日に北信越大会の優勝を決め「選手たちは本当によく頑張ってくれた。インターネットの速報などで情報を得て、何とか勝ち取ってほしいという思いだった」と振り返った。

2カ月の間に、学校の許可を得て、介護福祉施設での職場体験などにも励んだという。

また陸上指導者の小出義雄氏(享年80)の他界に際して、教え子の有森裕子氏が語った恩師の教えが印象に残ったという。「ものごとに意味のないものはない。どんなことが起きても『せっかく』と思えるように、という言葉をおっしゃっていた。私の中にも突き刺さりました。せっかく処分をいただいた。何かを探さないといけないと自問自答する日々だった」。

同監督の行動に対する反響は大きかったが、処分期間中、学校側と同監督は何度も面談。反省の色が濃いことなど総合的に判断して、予定通りの監督復帰を決めていた。