6年ぶりにノーシードで夏を迎える東海大静岡翔洋の鈴木渓太郎捕手(3年)は、自慢の洞察力を駆使してチームを勝利に導く。プロ野球・巨人の元捕手、原俊介監督(41)から学んだことを夏に生かすつもりだ。

鈴木は、初めて正捕手として臨んだ昨秋の県大会での悔しさを忘れていない。清水桜が丘との準々決勝9回裏2死三塁。その日2安打の打者を迎えたが「抑えられる自信があった」と、勝負を決断。だが、一塁手の頭を越えるサヨナラ打を許し、春のセンバツ出場を断たれた。「歩かせても良かった場面。悔やんでも悔やみきれません」。

冬は守備面を徹底的に鍛えた。本塁のブロッキング、盗塁時の二塁への送球練習を原監督とのマンツーマンで学んだ。その結果、今春の県大会初戦で2つの盗塁を刺し「成果を実感できた」と胸を張った。私生活では洞察力を意識して過ごし、部室内の物の位置、向きの違いにいち早く気づくようになった。元々は大ざっぱな性格だったが「最近はどんなものにも無意識に反応するようになりました」と笑顔で話した。

試合中のベンチ内では指揮官の横を常にキープ。「自分に関係のないプレーでも学べる」と、首脳陣の会話を一言一句聞き逃さないようにしている。また、「他者の気持ちになって置き換えろ」といった教えを受けて取り組み続けたことで、相手の配球を読めるようになり、5月中旬の帝京三(山梨)戦で2ストライクから相手の決め球を打ち、本塁打。打撃でも好影響が及ぶようになった。

まもなく迎える最後の夏。「『鈴木のおかげで負けなかった』と言われたらベスト」と、縁の下の力になるつもりだ。その上で「原監督と出会えたことで野球以外のこともたくさん学べた。恩返しのためにも甲子園へ行きたい。草薙球場で監督を胴上げしたい」と力を込めた。【河合萌彦】

◆鈴木渓太郎(すずき・けいたろう)2001年(平13)8月1日、神奈川・横須賀市生まれ。小1からソフトボールを始め、中学時代に所属した逗子シニアで野球を始めた。東海大静岡翔洋では、2年春に初のメンバー入り。右投げ左打ち。171センチ、73キロ。血液型O。家族は両親と妹。