長沼、塙工、猪苗代、西会津の4校による連合チーム、県南会津連合が第6シードの学法福島に7回コールド1-10で敗れた。

西会津でただ1人の野球部員・鎌倉アルテミス内野手(3年)は、7回裏に左前打を放つなど最後まで奮闘。同校では生徒数減少の影響で、昨年度から団体競技の部活動廃止が決定。特例で認められた西会津野球部員として、最後の夏が終わった。

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アルテミスは最後まで勝負をあきらめなかった。9点を追う7回裏無死一塁、左前にはじき返しチャンスを作った。しかし、後続が倒れ試合終了。苦しくも充実した3年間が終わった。「悔いはあるけどお世話になった方々に、少しでも恩返しできたのならよかった」と必死に涙をこらえた。

第6シードの強豪から8安打を放ち、6回裏にはスクイズで意地の1点をもぎとった。学法福島・藤森孝広監督(41)も「連合ではなく、各校の本当に野球が好きな選手が集まったオールスターだと選手にも話した。最後まで食らいついてきた素晴らしいチームだった」とたたえた。

入学時に4人いた3年生が卒業してから2年間、たった1人で活動してきた。ランニングや筋トレなどの基礎練習やネットスローなどを黙々とこなした。時には吉井秀樹校長や同級生たちがキャッチボールやノック、打撃練習を手伝ってくれた。廃部の危機には「自分は続けたいです」と願い出て、特例で認められた。「本当にうれしかった」。合同チームを率いた長沼・影山高見監督は「これからも人とのつながりを大切にしていってほしい」と選手たちにエールを送った。

喜多方で投手だった父明雄さんの影響で野球を始めた。母アンジーさんがシンガポール人のため、日本と二重国籍を持つ。アルテミスという名前には「狩猟の女神」の意味がある。卒業後はシンガポールで2年間の兵役につき、再び日本に戻って調理師を目指すつもりだ。「世界のおいしい料理をつくれるようになりたい」。64年(昭39)創部の西会津野球部の歴史は途絶えるが、アルテミスが大切にした絆はこれからも続いていく。【野上伸悟】