<全国高校野球選手権:神村学園7-2佐賀北>◇6日◇1回戦

1球が、1つのプレーが勝負を分ける。令和となって最初の夏。熱い戦いのワンシーンを「ヨネちゃんの『プレー』バック」と題して切り取った。大会初日は佐賀北の江藤謙伸右翼手(2年)を取り上げる。

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江藤の差し出す右手グラブの下をボールがすり抜けた。無人の外野を転がる。7回1死一塁。一気に打者走者まで生還した(記録は単打と失策)。2-7。これで勝負は決まった。「走者がいたんで、早く三塁に投げようとしたら、上体が浮いて」。送球を急いで、逆に2者をかえした。

打席では6回、二塁打を放ち、2点目をたたき出した。その直後に出た失策。「気にするな。来年、ここに戻ってきてくれたらいいから」。試合後のあいさつを終えると、主将の小野颯真捕手(3年)が声をかけてくれた。「はい、すいません」。こう答えて、涙が止まらなくなった。

佐賀北が「がばい旋風」を巻き起こした07年は5歳だった。小学6年になった14年夏、野球好きの父親に連れられて、甲子園を訪れた。「甲子園は夢舞台だった。そこに出られたんで、楽しみしかなかったのに。どの方向からも見られていて、緊張しました」と振り返った。

夢舞台が現実となって、野球の怖さ、難しさを教えてくれた。「守備力を高めて、戻ってきたいです」。涙をぬぐった江藤が、こう言い切った。【米谷輝昭】