初優勝に挑んだ仙台商(宮城)が絶対王者に0-1と敗れたが、大善戦で2年ぶり4度目の準優勝を果たした。今夏の全国選手権3連覇で、今大会も3連覇を達成した中京学院大中京(岐阜)に互角の戦い。先発完投した右腕・高橋堅(2年)の暴投で1失点はしたが、「史上最弱世代」と奮起を促されてきた佐藤楽翔(がくと)主将(3年)ら3年生の成長で、全国で1番長い高校野球生活を導いて胸を張った。

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佐藤楽主将らナインが、真っ黒になったユニホームで充実感を得た。相手投手陣に今大会すべて完封の優勝を与えたが、想像以上の好内容。選手全員の氏名が記入された準優勝の表彰状を手にした同主将は「正直、初回からたくさん点を取られるかと思っていた。ピンチを抑えられて攻撃でも元気になれた。全国の決勝で負けて悔しいけれど、一番最後の晴れ舞台で一番強いチームに0-1は胸を張って良い成績だと思う」。最後まで、笑顔のままだった。

1回表に1死三塁を防ぐと、2回は内野陣で併殺。3回は1死満塁で相手エンドランで打者の空振りを奪い、走者の本塁憤死でリズムに乗った。同裏は先頭の高橋堅が中前安打で出塁すると、1死二、三塁のチャンス。エンドランを仕掛けたが、打者が痛恨の空振り。9回には佐々木虎太郎捕手(2年)の会心の一撃も三塁手の正面をついた。

歯車がかみ合わないスタートから逆境を乗り越えてきた。秋は県大会準々決勝で仙台工に敗れ、今春も決勝で仙台二に惜敗。西山康徳監督(37)から「史上最弱世代。2年生に頼らないといけない」と厳しい言葉をたたきつけられたことで反骨心が芽生えた。連日、対話を増やして5人しかいない3年生の得意な役割を明確にした。プレー、守備など下級生の手本となれる強みを決めた。「私は一塁手として声で引っ張ること。自分たちの、なにくそ魂に火がつきました」。自然とチームが1つになった。

夏以降も、3学年全員での切磋琢磨(せっさたくま)を継続してきた。「今大会は『ミスしても笑顔』をテーマにしました」。初戦は選手権準V崇徳(広島)に序盤に5得点して快勝。準々決勝は夏の1回戦で延長負けを喫した村野工(兵庫)に1-0とリベンジ。西山監督も「3年生は夏以降にさらに成長してくれた」と賛辞を贈った。

新チームは今日3日に東北大会(19日開幕、福島)出場権をかけた宮城大会が開幕する。4日には仙台工との初戦。エースとして経験を積んだ高橋堅は「3年生の元気さを引き継いでいきたい」。次期最強王者の座に挑み、先発5人の2年生を中心に日本一へ再発進する。【鎌田直秀】