気合が先走ったのかも知れない。1月中旬の練習日。東海大相模・鵜沼魁斗外野手(3年)は中堅でノックに入った。初球だった。右中間への当たりに目いっぱい足を動かす。直後、フェンスに激突した。視界がぐるぐる回り、立ち上がれない。脳振とうだった。

2週間の完全休養を余儀なくされたが、気持ちを出すのがスタイル。復帰した後も「野球にはあること。体を張ったプレーは怖くはないです」と平然と話す。昨秋までに高校通算27本塁打。長打も備える俊足の1番打者は、積極性を心掛ける。「初球ストライクを当てに行かず、振っていく。自分が消極的になると、打線の入りが悪くなる。先頭を切って投手に向かう姿勢がチームに勢いをつける」と信じている。

最後の1年に雪辱を期す。昨夏甲子園。山村、西川と2年生トリオとして注目されたが、2試合で8打数1安打に終わった。「神奈川大会では『3年生のために』と思っていたのが、甲子園では薄れてしまった。結果を出したい欲が出ました」と正直に打ち明けた。大会後にU18日本代表にも選ばれたが、出場機会はほとんどなかった。「木製バットに対応できませんでした」。選ばれたうれしさより、悔しさが残った。

チームが大事と学んだ。「いくら個の能力が高くても、つながりがないと勝てない。自分の結果より、チームがどう勝てるか」。出場が決まった今春センバツは中止となった。最後の夏へ。日本一しか見ていない。【古川真弥】