岩手でも地区予選を勝ち抜いた31校により県大会が開幕した。昨夏4強の一関工は165センチエース左腕・小野寺悠斗(3年)が3安打9奪三振完封。緩急を駆使して相手を封じる姿は、昨夏の3回戦で盛岡大付の強力打線を翻弄(ほんろう)して撃破した168センチ左腕・平野拓夢の再来を予感させた。14日にも1回戦8試合が行われ、16強が出そろう。

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最後の打者を中飛に打ち取ると、小野寺は仲間に向かって左手で小さくガッツポーズした。時折強く降る雨の中、公式戦初完封。スライダーやチェンジアップなどを有効活用し、最速130キロ強のストレートを速く見せる術は抜群だった。「真っすぐは走っていたので、三振をとりにいけたことが大きかった」と4者連続を含む9奪三振。ピンチの場面でギアを入れる前は120キロ前後。メリハリを生かした146球だった。

1回から3回までは先頭打者を出す苦しい序盤だった。守備にも救われた。死球、右前安打と犠打で迎えた2回裏無死二、三塁。一打同点の場面で、相手打球は右翼前に。右翼手の細川知靖外野手(3年)が捕球姿勢をとる“偽装”。タッチアップするためにベースに戻りかけた三塁走者をあざ笑うかのように打球は右前にポトリ。慌てた走者は、ぬかるんだグラウンドに足をとられながら懸命に本塁を狙ったが、タッチアウト。山崎大登監督(52)が新任した新チーム以降、練習してきたトリックプレーも結実した。

昨夏に盛岡大付を破った1学年上の先輩たちの姿も見てきた。巧みな緩急で強力打線を封じた先輩左腕も模範の1人。小野寺は「去年の先輩を超えたい。先輩からはピンチの場面でどう真っすぐを使うかなどを教えてもらった」。今冬は下半身強化に努めただけでなく、ボールを握る指先の角度でキレや微妙な変化を習得。今春以降の練習試合では盛岡四の好投手、左腕・山崎諒(3年)に投げ勝ったことも自信にし、最後の夏に臨んでいた。

2回戦では最速140キロ右腕・佐藤真尋(3年)を擁する高田と対戦。「次も三振をとって勝ちたい」。県大会出場31校中、2番目に小さい「背番号1」の背中が、ひときわ大きく輝いた。【鎌田直秀】

▽花巻南・鈴木蒼一朗捕手(3年=序盤の好機を生かせず)「自分のところで何度もチャンスの場面があったのですが、せめて1点、2点でも取れていれば…。そこには悔いが残ります」