15日の甲子園交流大会から、東北勢が出場する。その先陣を切って、第2試合に登場する磐城(福島)は14日、同校グラウンドで最終調整を行い、木村保前監督(50)が4カ月半ぶりにシートノックを行った。昨秋の東北大会で8強入りし、21世紀枠での46年ぶりセンバツ出場に導いた木村前監督は、4月から福島商に異動し、現在は県高野連副理事長を務めている。特例として試合前のノッカーとしての参加が認められ、再び教え子たちと一緒に戦う。仙台育英(宮城)は第3試合で倉敷商(岡山)と、鶴岡東(山形)は16日の第3試合で日本航空石川(石川)と対戦する。

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木村前監督による本番モードの7分間で、磐城の選手たちは臨戦態勢を整えた。3月30日、転任前に涙で「最後のノック」を行ってから4カ月半、魂のノックは健在だった。直前まで高野連の役員として、県の代替大会、東北大会も会場で奔走。多忙の合間を縫って秘密特訓をしてきた。右手には2カ所マメができていた。それでも「まだまだです。明日はもっとしっかり」。常に「Play Hard」を信条とする木村前監督らしく、全く納得していなかった。

特例で認められたノッカーでの参加に「いろいろあったこの子たちと、最後に我々の聖地である甲子園で、ともに過ごすことができるのが、心底うれしいです」と素直な喜びを口にした。しかし、すぐに表情が変わった。「私なんかはどうでもいいんです。彼らが最高の舞台で、最高の準備ができることだけを考えて、1球1球、1人1人に対して魂込めてやりたい」と全力ノックで臨む。母校の大先輩の参戦に渡辺純監督(38)も「本当は指揮をとれればいいんですけど。ノックだけでも力を与えてくれれば。後藤(部長)だけでも百人力。木村先生がいれば1000人力、いや1万人力です」と喜んだ。

練習後に行われた出発式では、応援団から熱いエールを送られた。岩間涼星主将(3年)は「本当はみなさんに甲子園に来ていただいて応援してほしかった。みなさんの応援をしっかり胸に刻んで、頑張ります。全力プレーをみていただきたい」と”保イズム“を約束した。木村前監督は久々に選手と時間を共有し親心もよみがえった。「体も大きくなったし、目つき顔つきも大人の雰囲気になった。ただ、あの舞台に立つと緊張するし、頭が真っ白になると思う。その時にPlay Hardの原点に立ち返ってほしい」。ノック後はスタンド観戦となるが、気持ちはグラウンドに置いたまま、選手に寄り添い続ける。【野上伸悟】