2年ぶり開催のセンバツが開幕し、昨秋東北王者の仙台育英(宮城)が、同四国王者・明徳義塾(高知)との強豪対決を1-0でものにした。公式戦初出場で背番号「15」をまとった遠藤太胡(だいご)外野手(2年)が2回、初打席初スイングで決勝の先制適時打。先発の最速143キロ左腕・古川翼(2年)が、4回途中を1安打無失点と好投した。春6年ぶりの勝利で甲子園通算49勝目。史上20校目の50勝に王手をかけた。次戦は大会第6日(24日)に神戸国際大付(兵庫)と対戦する。

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公式戦デビューの仙台育英・遠藤が甲子園で大仕事をやってのけた。2回1死二塁で迎えた初打席、須江航監督(37)からはエンドランのサイン。カウント1-0から「低く強い打球を打とう」と相手エース左腕・代木大和(3年)が投じたスライダーをしぶとく左前に運んだ。「古川が頑張って投げていて、楽にしてあげたいという気持ちで、素直にうれしかったです」。スタートを切っていた二塁走者の秋山俊外野手(3年)が悠々と先制のホームを踏んだ。

「冬の発表会」のつもりで臨んだ。1安打1四球1打点で勝利を呼び込んだ遠藤だが、昨秋の県大会、東北大会はベンチ外。「自分は応援するしかなかったので『センバツを決めてくれ』という思いでした」と、スタンドからセンバツにつながる公式戦9試合を見守った。今冬は打撃強化を掲げ、持ち前のフルスイングを磨いた。ウエートトレーニングに注力。スイングスピードや飛距離にこだわり、同スピードは147キロから150キロ、スクワットは130キロから210キロと進化し、力強さが増した。

甲子園は家族で待ち望んだ夢舞台だった。「小さいころから親子で目指し、とても思い入れのある場所」。日大山形で投手だった兄彪流(たける)さんは在学中にチームが2度甲子園を経験も、出場は果たせていない。そんな兄から「頑張れよ」と激励され、最高の結果で応えた。緊張はなく「楽しかったです」と聖地をかみしめる余裕もあった。「初戦に勝てたので、日本一に向かって頑張ります」と今後も勝負強い打撃を披露していく。

仙台育英は次戦に勝利すれば甲子園通算50勝の節目を刻む。過去にこの記録を達成した19校はいずれも優勝を経験。東日本大震災から10年を迎えた2021年、吉兆データを味方に、東北勢初優勝に向けてギアを上げていく。【山田愛斗】

▽仙台育英・須江監督(6年ぶりの春1勝)「(明徳義塾)馬淵監督の甲子園51勝の粘り強さで、非常に執念のプレーが多く、決めきれなかったが、よく守ったと思います」

◆仙台育英が通算49勝目 仙台育英は春夏通算49勝目(春13勝、夏36勝)。学校別通算勝利ランキングで20位の大体大浪商に並び、東北勢初の50勝に王手となった。