鹿児島大会は1回戦6試合が行われ、鹿児島南が3-0で錦江湾を下し、初戦を突破した。同校OBで元監督・コーチの橋口正広さん(69)は、前立腺がんで闘病中。車椅子で球場を訪れた橋口さんの前で、一丸で全力プレー。炎天下で足をつらせる選手も出たが、気迫と執念で勝利を届けた。

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車椅子で応援に駆けつけた橋口さんに、うれしい1勝を贈った。3人の投手が10安打を浴びながらも、完封リレー。打っては10安打で3点を奪った。攻守の奮闘に、川尻信也監督(37)も「よく粘り強くやってくれた」と目を細めた。

3番手で登板した児之原(このはら)侑志主将(3年)は9回1死一、三塁を併殺で締め、ほえた。6回から左足がつったが「大会前(差し入れで)まんじゅうやたこ焼きをもらい、みんなパワーをもらった。橋口さんにパワーを贈ろうと思っていた」と気合で勝負。エース田中胡斗龍(ことろう、3年)も「鹿児島南があるのは橋口さんのおかげ。勝つことで元気を与えたかった」と、モチベーションは高かった。

「橋口さんのまんじゅう」に感謝を込めて戦った。元監督は18年に前立腺がんの手術を受け、闘病生活を送る。会社に勤めながら指導する外部監督として、1980年から2年間指導。その後も30年以上、コーチとして関わった。指導に専念するため会社を辞め、たこ焼きとまんじゅう店を開業。夏の鹿児島大会前、まんじゅうを差し入れる“験担ぎ”が恒例だった。母校の勝利を見届けた橋口さんは「おめでとう。今まで練習してきたことを自信に試合をしてください」と、後輩にエールを送った。

2回戦は5月の県選抜大会2回戦で敗れたシード校の大島戦。「リベンジしたい」と奄美大島出身の田中。連勝で、橋口さんをまた元気にする。【菊川光一】