兵庫大会は12日、明石商(兵庫)が「来田パワー」にあやかり、7回コールド発進を決めた。

昨年まで在籍したオリックス来田のプロ初本塁打にナインも発奮し、加古川東相手に11安打8得点。プロ注目の福本綺羅(ひかる)外野手(3年)も2安打1打点で快勝に貢献した。主軸の来田とエース中森(ロッテ)が抜けて最初の夏。今春県大会では1回戦でコールド負けした甲子園最高4強校が、先輩に続けと逆襲に出る。

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逆襲に燃える明石商ナインが球場に着くと、勇気づく朗報が舞い込んできた。狭間善徳監督(57)が、来田のプロ初アーチを告げると、「オーッ!」と歓声と拍手が沸き起こった。

プロ注目の4番福本が「スイッチが入った」というように、1回に先制すると3回にも追加点。4回はスクイズや、岡原圭佑内野手(2年)の右翼フェンス直撃の走者一掃の適時二塁打などで一挙5点を奪った。

悔しさがある。チームを引っ張った来田&中森のスターが抜けた春の県大会は、1回戦で神戸弘陵に0-10で7回コールド負け。狭間監督は屈辱にまみれた選手に言った。「お前らの力だ。100本ヒットを打っても0-1で負けたら負けは負け。負けたとき、どうなって負けたのか、打たれたのか。反省して次に生かすしかない」。コロナ禍の緊急事態宣言中は、県内の公立校は練習試合を行えない不利な状況にあったが、一丸の結束ではね返した。

福本は複数球団スカウトの前で2安打1打点。1学年上で同じ左打ちの外野手、来田の背中を見て育った。「来田さんはフルスイングが特徴。開いて打たず、中に入れて打つから打球が飛ぶ」。引きつけてフルスイングする打撃は最高のバイブル。昨夏譲り受けたバットと打撃用グラブも愛用し、快勝発進に貢献した。

先輩来田の歴史的会心弾に福本が「刺激になります」と言えば、狭間監督も「それぞれの場所で一生懸命頑張っているのが明石商の良さ。今日の勝ちに結びついている」とうなずく。来田&中森の2年生コンビが引っ張った19年の甲子園春夏4強校が、力強い再出発を決めた。【酒井俊作】