今夏の山口大会初戦から全7試合を1人で投げてきたエース河野颯(はやて、3年)が、高校最後の夏に別れを告げた。

初回、神戸国際大付・阪上翔也投手(3年)に先制2ランを浴びた。なおも続いた1死一、二塁のピンチを無失点でしのいだ。5回は自身の二塁打から3点奪取につなげ、3-2と逆転。だが7回、再び阪上に決勝打を許した。それでも8回は相手の5番からの打順を3人で締め、1死から連続奪三振。131球を投げ終え、ボールを丁寧にプレート付近に置いてマウンドを降りた。

試合前から「自分1人で行く気持ちでいました。こういう舞台に立てたのも(周囲の)みなさんのおかげ。感謝の気持ちを伝えたいです」と完投への覚悟を決めていた。

夏を投げきる準備は春から着手。5月から6月にかけ、1日150~200球を投げ込み、体力トレーニング、走り込みと準備と成長を重ね、盛夏に臨んだ

高川学園中1年からのチームメート、山崎帆大(かいと)捕手(3年)の出すサインを信じ、腕を振り続けた。

「中学校からずっと一緒にやってきて、苦しいときもきつい練習も一緒に耐えてきた。すごく信頼できるキャッチャーです」。どんな自分も見ていた女房役のリードを支えに、本塁打を浴びても崩れることなく、冷静に丁寧にピンチを断った。臆することなく90キロ台のスローカーブを投げ込み、中心打者を翻弄(ほんろう)した。山口大会5試合、甲子園2試合。信頼する仲間と、1つ1つのアウトをひたむきに取った。

初戦の小松大谷(石川)戦で学校初の甲子園勝利を挙げ、この日は近畿の強豪と接戦を演じた。試合後、松本祐一郎監督(34)から、山崎から「ナイスピッチング」とねぎらわれた。力を出し切った夏が終わった。【堀まどか】