第94回選抜高校野球大会(22年3月18日開幕、甲子園)の21世紀枠候補9校が10日、日本高野連から発表され、東海地区は三重県の中部、多気町にある相可(おうか)が初めて選ばれた。

部員27人中19人が農業や環境系の学科に在籍するため、測量士など資格取得の補修や実習で全員がそろうのは土、日曜だけだ。平日は半分だけ使えるグラウンドでポジション別のメニューで基本練習を積み重ね、秋季大会8強入りした。

21世紀枠候補に選ばれ、エース・山口椋太郎投手(2年)は「緊張していたけどうれしい」と喜んだ。生活経済科に在籍。地元特産の松阪牛を肥育し、餌やりから牛舎の掃除、ブラッシングを行っている。体重500キロ~600キロになる牛に負けない力も必要だ。「最初は大きくて怖かったです。舌でなめられたりもして(笑い)。でも今は家族みたいな存在で大事に育ててています」。この日も2歳になる「きんかん9」を丁寧にブラッシングした。

そんな山口は「まっすぐが持ち味」と自らの速球も磨いてきた。ウエートトレーニングを中心に体づくりに励み、公式戦では最速138キロを投げ、目標の140キロにも近づいてきた。秋季大会では3試合全て先発で投げチームを支えてきた。逵(つじ)兼一郎監督(47)も「スピードもあるし向上心も高い。打撃センスもすごくいい」と信頼を寄せる。

同校は夏の甲子園では3度出場したが、センバツはまだない。山口は「甲子園は高校球児の夢の場所。そこに届きそうなので、この冬頑張りたい」。大切な家族を育てながら吉報を待つ。【三宅ひとみ】