第94回選抜高校野球大会(3月18日開幕、甲子園)の選考委員会が28日、大阪市内で開かれた。東北勢から3校が選出され、21世紀枠東北地区推薦校の只見(福島)が、春夏通じて初の甲子園出場を決めた。投手陣の一角を担い、昨秋に創部初の県8強入りに貢献した酒井悠来(はるく)投手(2年)は、弟怜斗外野手(1年)と全力プレーを誓った。昨秋東北王者で明治神宮大会4強の花巻東(岩手)は、8強入りした18年以来4年ぶり4度目、東北大会準優勝の聖光学院(福島)が4年ぶり6度目の出場を決めた。組み合わせ抽選会は3月4日に行われる。

 

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うれしさがこみ上げた。体育館で甲子園出場を伝えられた酒井悠は「(弟と)うれしい気持ちを分かち合いました」と目を細め、気持ちを聖地に向けた。只見町は昨年12月時点で人口約4000人。高齢化率は47・1%と高い。だからこそ常に“支え”を感じてきた。「小さい頃から登校などを見守ってくださるので、町の方々に恩返しをしたい」と気持ちを引き締めた。

小学生低学年からソフトボールを始め、中学は軟式野球部に入部。地元の只見高に進学し、昨秋は弟と同じグラウンドで1球に集中した。「自分は投手で、弟は中堅。弟は守備範囲も広いので、安心して投球ができる」と全幅の信頼を寄せる。打撃でも上位打線に名を連ねる弟に助けてもらいながら、持ち味の伸びのある直球を投げ込んだ。

秋の大会後は限られた環境で技術を高めた。積雪で11月下旬から約4カ月はグラウンドが使用できない。そのため、跳び箱に使用するロイター板の上に体操のマットを敷き、体育館で投げ込んだ。「下半身の体重移動をしっかりして投げられるので実践的な練習」と実感する。体育館の2階からボールを投げてもらい、背走の練習をした怜斗も「先生方の提案でやることになって、上達した実感はある」と手応えを示した。

年明け初練習の4日。部員ら約20人で行った初詣に参加し、2人は「甲子園出場」を願ったが、兄はもう1つお願いした。「甲子園のマウンドに立ってプレーできること」。弟の存在を背中で感じながら、春を知らせるサイレンを聞いて1球を投じる。【相沢孔志】