近江(滋賀)が延長の末にサヨナラ勝ちした。

興奮のあまり、記念すべきベース1周はあっという間だった。近江の8番打者、大橋大翔捕手(3年)が同点の11回1死一、二塁でカーブを強振。左翼席に飛び込むサヨナラ3ランで、熱戦に終止符を打った。

「小学校から野球を始めて、柵越えの本塁打は初めてでした。一塁を回ったときの歓声で本塁打と分かって、初めてベース1周してうれしかったです」

本人も、ベンチも驚きの一撃に笑みがはじけた。

左足負傷のエース山田に、苦心のリードを続けた。山田が死球を受けた直後の6回、マウンドで状態を確認。すると「いつも通りでいい」と返答があった。ただ、中学のボーイズリーグ時代に、別チームながら選抜チームでバッテリー経験があった大橋は、負傷の影響にすぐに気づいた。

踏ん張りが甘くなるため、直球は高めに浮くことがあった。スライダーを増やすなど変化球をうまく使い、負傷後の7回を0点でしのいだ。表と裏で勝利の立役者となった。

元来、おとなしい性格。秋の近畿大会後、山田に「感情を表に出せ。おまえが成長しないと、チームも成長しないぞ」と、はっきり言われた。山田の発案で、毎日の練習後にナインを前に話をする機会が設けられるようになり、自己主張ができるようになった。

「山田は死球を受けてもマウンドに立ち続けていたので、自分がカバーしようと思った。170球いっていたので、どうにかしたいと思っていた。山田はよく踏ん張って投げていました。チームに、山田を支える柱になる人間が増えてきたと思う。新チームになったときから山田が『日本一』と掲げていた。あと1つに迫ったので、明日は全力で勝ちにいきます」

ナインが共有している合言葉は「山田1人のチームじゃない」。それを体現した大橋が、決勝戦でも近江野球を支える。【柏原誠】