北照が東海大札幌を6-0で下し、優勝した14年以来8年ぶりに決勝進出した。2年生エース上川貴之(2年)が9回7安打で初完封。最速149キロ左腕、門別啓人(3年)擁する難敵を撃破した。2年前に旅立った母に約束したプロの夢を果たすため同校に進学。カーリングで培った制球力で無四球勝利を飾った。第2試合の苫小牧中央-札幌第一は1回表途中で雨天ノーゲームとなり29日正午に順延。29日に予定されていた決勝戦は30日午前10時から札幌円山で行われる。

上川が正確無比なコントロールで東海大札幌打線を封じ込めた。9回1死から右前打を許し走者を出すも、動じない。最後は二塁ベース近くにぼてぼてのゴロを打たせ、併殺で終了。ポンとグラブをたたくと、すぐに背後で守ってくれた先輩たちを笑顔で出迎えた。3併殺での完封に「バックがしっかり守ってくれるので楽に投げられた」。北照で2年生から背番号1を背負うのは12、13年センバツ出場時の左腕エース大串和弥以来。期待の成長株が、チームを決勝に導いた。

天国の母に快投を届けた。20年12月2日、母雅世さんが、がんのため53歳の若さで旅立った。中3だった上川は「プロ野球選手になるから天国から見ていて」と記したボールを棺に入れ送り出した。そして「甲子園で投げる姿を母に見せたい」と、前年19年まで2年連続で夏の甲子園に出場している強豪北照に進学。今春、初めて背番号1を付け8年ぶり春王座に王手をかけた。「(1番の)自覚を持ち、まずは春、優勝へ引っ張っていけたら」と意気込んだ。

北見常呂小4年から北見常呂中1年まではカーリングとの二刀流。「石を離す微妙な指の感覚は野球のリリースにも似ている」。昨年の日本選手権で準優勝した常呂ジュニアのサード上川憂竜(19)は父方のいとこ。北見で行われている日本選手権にも出場していた常呂ジュニアはプレーオフに進出できなかったが「悔しかった。その分、僕が頑張ろうと思った」。ともに練習してきた仲間の思いも、力に変えた。

最速は140キロ前後も、背番号11でデビューした昨秋から公式戦31イニングに登板し、わずか1失点自責ゼロ。四球も1つだけと抜群の制球力を誇る。上林弘樹監督(42)は「いつも淡々と投げてくれる。2年生が頑張って投げることで他の3年生の刺激になれば」。氷のようにクールな“精密機械”を軸に、頂点を狙う。【永野高輔】