07年夏以来の甲子園を狙う創価(西東京)は10日、スリーボンドスタジアム八王子で日野との初戦に臨み、6-4で逆転勝利を収めた。

先発の最速146キロ右腕・杉江敏希投手(3年)が、10安打4奪三振で、4失点完投勝利。足をつりながらも9回を投げ抜き、初戦突破に貢献。身長168センチの小さなエースが、目標の甲子園へと導く。

小さなエース杉江の初陣は苦しかった。思うように直球が走らず、日野打線に10安打を浴びた。4回からは幾度も両足がつったが、「気にする余裕もなかった」と集中した。同点に追いつかれた5回は1死満塁のピンチ。それでも5番上野雄哉外野手(3年)を見逃し三振、6番加藤航太外野手(2年)を三邪飛に抑え、流れを渡さなかった。

和歌山・日進中の3年時には、全国中学校軟式野球大会に出場し、ベスト4に導いた。県内の高校に進むつもりで、硬式野球の体験練習を始めていた。そこへ訪ねてきたのが創価の片桐哲郎監督(46)。「わざわざ和歌山まで来ていただいた監督のもとで、野球をやってみたい」。思いが変わり、春夏甲子園出場8度の創価へ進んだ。

1年秋から背番号「1」を背負ったが、昨夏の大会後に右肩痛を発症。秋は登板機会がなく、捕手を座らせて投球を再開したのは今年2月だった。春の都大会は「自分が何とかしないと」という思いが先走り、先発した帝京戦で6回5失点。敗戦後は正捕手の室田大和(3年)と「配球をこれ以上ないくらい考えた」。体重も4月から5キロ以上増えて78キロ。「授業の休み時間にご飯を食べて、夜は餅を10個平らげた」。全ては勝利のためだった。

最後の打者を空振り三振に仕留めると、168センチの身体を大きくのけぞらせた。「野球に身長は関係ない」。そう言い切って笑う男が、夏の主役に躍り出る。【藤塚大輔】