<シン・うるうるマン:北星学園大付・堀口雅矢二塁手(3年)>

天国の母に渾身(こんしん)の一打を贈り届けた。0-0の4回1死二塁で「何とか次の4番につなごうという思いだった」と振り抜いた打球は、ぐんぐん伸び、先制の中越え三塁打に。全力疾走で三塁にたどりつくと塁上で、思いっきり雄たけびを上げた。「門別投手が出てきたら難しくなる。その前に先に点を取りたかった」。これが高校生活最後の安打となった。

2月21日、母章子さんが52歳の若さで亡くなった。仕事帰りに、疲れて車の中で寝てしまい、意識を失った。病院へ搬送された直後に駆けつけたが、言葉をかわすことはできなかった。「甲子園でホームラン打つから、見ていてね」。その声で母の血圧は上昇。目から涙がこぼれたのを見て「聞こえたと思う」。2週間後、息を引き取った。

寮生活だが、搬送される3日前、寮の食事が出ない日曜日に、母が弁当を作ってくれた。「ステーキとジャガイモの煮物が入っていて、すごくおいしかった」。天国で見守ってくれる母のために打って走った。「ホームランは打てなかったけど、三塁打は母が力をくれたのだと思う」。最期の時を思い出し、ぼろぼろ涙があふれ出た。【永野高輔】