<シン・うるうるマン:小樽双葉・外村一翔投手(3年)>

取り返そうと必死だった。6回表に自ら2失点し勝ち越しを許した。その裏1死一、二塁、左越えに適時二塁打を放ち、塁上で力強く右手を突き上げた。「自分のせいで点を取られた。次の回で後輩の中屋に代わるのは分かっていた。1点でも取って、助けてあげたかった」。1点差に迫る、貴重な一打だった。

今春、右腕のしびれを感じ、病院で診察を受けた。病名は「胸郭出口症候群」。血行障害による慢性的なしびれを抱えながらの最後の夏だった。この日は6回まで128球を投げ「最後は握力がなくてボールがいかなくなってしまった」。6回で1度降板後、7回から登板の中屋は雨の影響もあり制球が定まらず、4連続四球などで5失点。再び自身がマウンドに。「最後に投げさせていただいた監督に、感謝したい」。計144球。高校最後の舞台を、目いっぱい満喫した。

春の地区予選中に右肘靱帯(じんたい)を負傷した池田一心(いっさ、3年)の代役として、同クラスの石坂主将が一塁手から捕手に転向。慣れない石坂に代わり、配球はすべて自身で考えた。「石坂が遅くまで練習につきあってくれて。今日も苦しくなったら声をかけてくれて。それなのに」。必死でもがき続けた仲間との時間は、いつか、かけがえのない思い出になる。【永野高輔】