仲間の思いがバットに乗り移った。八戸学院光星の5番織笠陽多外野手(3年)が逆転満塁本塁打を放ち、チームを4強に導いた。1-2の3回2死満塁。甘く入った初球を豪快に振り抜き、左翼芝生席へ会心のアーチを描いた。現3年生の部員数は55人の大所帯。背番号「7」をつけるレギュラーとして、控え選手のためにも負けるわけにはいかなかった。19年以来3年ぶりの甲子園へ、あと2勝となった。

高々と舞い上がった打球が左中間芝生席で弾むと、織笠は誇らしげに右こぶしを突き上げた。「打球が伸びてくれた。入ってホッとした」。一塁側スタンドは総立ち。メガホンの拍手が響き渡る。ダイヤモンドを回り、ナインとハイタッチ。自身初の満塁弾がチームを4強に導いた。

投手心理を読み、一振りで決めた。1-2の3回2死満塁。「ストライクを入れにくると思った」。3連続四死球後に投じる初球を狙った。低めは捨てて、ベルトより高い位置に照準を合わせた。「甘く入ってくれた」。内角高め直球を逃さなかった。豪快なフルスイングで相手の好投手を攻略した。

仲間の分まで負けられない。現チームの部員数は3学年合わせて170人を超える過去最多レベルの大所帯。ほとんどの選手がベンチに入れない。控え選手たちは普段の打撃練習で投手役を務めるなど、レギュラー陣のため、サポートに徹する。織笠は「声を出しながら、気持ちの入った球を投げてくれる。結果で応えないといけない」と意気に感じ、強い決意をにじませる。仲井宗基監督(52)は「どこよりも(部員数は)多い。170人を超える力が、1つに集まってくれれば」とワンチームで戦うことを強調する。

「リベンジマッチ」を迎える。準決勝は昨夏の準々決勝で敗れ、優勝した弘前学院聖愛との一戦だ。織笠は「厳しい戦いになると思うので粘り強く戦っていく」。19年以来3年ぶりの夏の甲子園返り咲きへ、名門の威信をかけて全力で立ち向かっていく。【佐藤究】

◆東奥義塾・原田祥吾外野手(3年=7回に2点差に迫る2ラン)「次につなぐ意識だった。負けて悔しいですけど、全部出し切れたと思います」