<高校野球東東京大会:東海大高輪台7-4郁文館>◇20日◇3回戦◇大田スタジアム

流れるような日本語で言った。「自分のせいで負けてしまいました」。郁文館(東東京)の台湾出身のエース左腕、姚柏宇(よう・はくう)投手(3年)は、真っ赤な目で悔しさをにじませた。

日本ハム、中日で投手としてプレーした田中幸雄監督(63)の指導を受け、高校からサイドスローに転向した。同校初のシード校として臨んだ今大会。初戦の東海大高輪台戦に先発したが、初回に4四死球と制球に苦しんだ。「秋や春とは、緊張感が違いました」。6回を3安打5失点。最後の夏が終わった。

野球と勉強を両立させるため、留学の道を選んだ。台湾からの留学生を受け入れている郁文館で楽しかった思い出は、なんでもない日常だった。「みんな優しくて、楽しかった」という寮生活。言葉の壁はいつの間にか、なくなった。試合中は、仲間の励ましの言葉に何度もうなずいた。好きな日本食は、しょうゆラーメン。台湾にはない味が好きになった。

日本の大学に進学する予定で、目標は「プロ野球選手」。その先には、もっと大きな夢もある。「お世話になった日本が好き。台湾も好き。だから台湾も日本も、もっと仲良くできるようにしていきたい」。野球選手として両国の懸け橋となるために、これからも白球を追っていく。【保坂恭子】