<シン・うるうるマン:札幌日大・前川周也一塁手(3年)>

主将として最後まで食い下がった。9回2死で「何とか食らい付いていこう」と、5球のファウルを含むフルカウントから、9球目を中前へ運んだ。「どん詰まりでしたけど。どんな形でも塁に出たかった」。続く宮武の中前打で、一塁から三塁まで激走も、同点の生還を果たすことはできなかった。

昨夏決勝は背番号15を付けベンチ入り。試合の合間に、マウンドの兄佳央(日大1年)に何度も水を届けた。7回まで1点リードも、8回裏にミスから2点勝ち越され敗れた。室内練習場には当時のスコアが張られ、自身も動画で何度も見直し悔しさを力にしてきた。「勝ちが近づくと意識する。そういうときこそ声を出すことが大事。みんなで『1つ1つアウトを取ろう』と。去年の反省は生かせた」。兄が果たせなかった甲子園切符はつかめなかったが、やりきった充足感が、あった。

2安打1打点だった初戦の小樽双葉戦後、兄から「次も頑張っていけ」とエールが送られた。7回には知内の好投手坂本から左中間への120メートル特大先制弾。公式戦3本目、通算10号を放ち、最後の夏が終わった。「大学に進学して高いレベルの投手からも長打が打てるようになりたい」。兄同様、目標はプロ。夢はまだ、終わらない。【永野高輔】