<高校野球栃木大会:作新学院8-1真岡>◇21日◇準々決勝◇栃木県総合運動公園野球場

「負けたのが悔しいですけど、それ以上に出られなかったのが…。チームに貢献できませんでした」。出場のなかった背番号「19」の野沢健友外野手(3年)は試合後、肩を落としてそう答えた。

高校入学間もない2年前の夏、後腹膜腫瘍が見つかった。新規発症数は10万人に1人ほどというまれな病気。「全く実感が湧かなかった」が、両親が涙する姿、そして病院を転々としたことから、徐々に重大さを自覚した。3つ目の埼玉の病院でようやく手術が決まった。今も腹部から背中にかけて大きな手術痕が残るも、早期発見されたことにより完治した。

中学では軟式野球をしていたが、高校ではバスケットボール部に入部した。だが昨年の夏、野球部の試合をテレビ中継で見て「もう1度野球がしたい」という思いが湧き起こり、転部した。

この日は試合途中から一塁コーチに立った。「できるだけリラックスさせようと打者の好きな子の名前を言ったりしました」。小山隆司監督(41)は「ムードメーカーの野沢がいてくれて、みんなホッとする」と欠かせない存在であることを明かした。

闘病中の1カ月間、誰にも会えない孤独を味わった。だからこそ、チームメートとのハイタッチに「つながりを感じる」と言う。約1年、短い高校野球生活だったが「すごく楽しかったです。チームのみんなが温かくしてくれて、うれしかった」。最初で最後の夏が、幕を閉じた。【星夏穂】

◆後腹膜腫瘍(こうふくまくしゅよう) 腹膜とは腹部の消化管や肝臓などを包み込んでいる膜で、背中側にある臓器が「後腹膜」と呼ばれる。その領域に発生した腫瘍の総称。初期では特に目立った症状がなく、腫瘍が大きくなってから発見されるケースが多い。年間の新規発症者数は10万に1人程度といわれる。