「KOSEI」が甲子園に帰ってくる。名門の威信をかけた八戸学院光星が、混戦の青森「夏の陣」最終決戦で、3年ぶりに頂点に返り咲き、夏11度の出場は県勢最多タイとなった。5番織笠陽多外野手(3年)が先制適時打を含む2安打2打点と大一番で勝負強さを発揮。4-0の5回無死には今大会2本目となる特大ソロを放った。両軍合わせて計29安打が飛び交い、試合時間3時間13分に及ぶ打撃戦を制した。

   ◇   ◇   ◇

苦しみながらも聖地行きは譲らなかった。9回に1点差とされ、なお2死二塁の局面。主将でエース洗平歩人投手(3年)が、最後の打者を中飛に打ち取った。3年ぶり11度目の夏制覇。ナインは一斉にマウンドへと駆け、人さし指を高く突き上げた。スタンドの控え部員152人も総立ち。チーム全体で歓喜の瞬間を分かち合った。

ここぞの正念場となった「青森頂上決戦」で、5番織笠が中軸の責務をバットで果たした。0-0の2回無死二塁。カウント2-2からの5球目。外角122キロスライダーをはじき返し、左中間を破る先制適時二塁打を放った。4点リードの5回無死には今大会2本目となる特大アーチ。高めに抜けたフォークを逃さず、左翼芝生席上段へと突き刺した。「手応えは完璧でした。変化球でカウントを取りにくることは分かっていたので、思い切って打ちにいけた」。試合前日には、データ班が分析した情報を頭にインプット。迷わずに狙い打った。

挫折を乗り越え、名門のクリーンアップを担う。織笠は「自分の打撃を試してみたかった」。強い決意と覚悟を胸に、光星の門をたたいたが、現実はそう甘くなかった。「全く通用しなかった。最初はレベルの差を感じていた」と振り返る。現3年生は、例年よりも多く55人。同じ志を持った者が全国各地から集った。言うまでもなくレギュラー争いは熾烈(しれつ)を極め、限られた選手しか背番号はつけられない。「諦めずにやってきたことが報われた。(青森)県民の選手が活躍することは大きいと思っている」。夏のベンチ入りメンバーで県内出身者はわずか2人。故郷の思いも背負いながら、名高き「KOSEI」のユニホームに袖を通す。

仲間と積み重ねた努力は裏切らなかった。入学時から日課として土日は欠かさずシャトル打ちを行う。二塁打2本を放った背番号「18」の深野友歩外野手、応援団長を務める庄司颯外野手(ともに3年)と打撃について言い合いながら、寮の外にある空きスペースを見つけてはバットを振った。織笠は「継続してやってきたことが、力になっている」と誇らしげに言った。

混戦の青森「夏の陣」を完結させ、ナインは新たなステージへと向かう。織笠は「やっと全国に挑むことができる」。充実感を漂わせながら、待ち焦がれた夢舞台を思い描いた。【佐藤究】