一関学院が20年ぶりの甲子園勝利をサヨナラでものにした。

岩手大会決勝はプロ注目の最速152キロ右腕、盛岡中央・斎藤響介投手(3年)を攻略。そして、この試合は今秋ドラフト候補左腕、森下瑠大投手(3年)を相手に3回までに4点を奪ってKOした。だが、4点のリードから一転。8、9回に2点ずつ失い、追いつかれたが、最後の最後にドラマが待っていた。

2年生の寺尾がバスターで殊勲の一打を決めた。延長11回1死二塁、カウント2-1からの4球目。130キロ直球を中前にはじき返した。打球に勢いはなかったが、二塁走者の小松大樹内野手(3年)が激走し、気合のヘッドスライディングで生還。「つなぐ打球を打とうと思い、狙ってはいなかったが、うれしい気持ちでいっぱいです」とかみしめた。「自分は2年前の独自大会優勝を見て、ここで頑張りたい」と入学した右腕がヒーローになった。

現チームは「最弱」と呼ばれることもあった。就任4年目の高橋滋監督(50)が「飛び抜けた選手、スーパースターはいない」と表現する中で、結束力は欠け、昨秋の始動直後からつまずいた。県大会2回戦で千厩に5-6。今春は県大会地区予選2回戦で一関一に8-10と屈し、敗者復活戦で本大会に進んだが、優勝した花巻東に2回戦で2-3で敗れた。その3つの敗戦がチームを成長させた。低く速い打球を打つ打撃練習を徹底。グラウンド上では学年に関係なく、意見をぶつけ合い、今夏の躍進につなげた。

高橋監督はコーチ、部長として春夏計4度の甲子園を経験してきたが、指揮を執るのは初めて。20年は独自大会で優勝も、聖地には行けず、「僕は甲子園に縁がない」と感じたこともあった。「2年前は甲子園がない中で岩手の王者を目指した。そして、昨年の先輩たちの思いも背負い、一丸になって戦ってくれて、本当に喜びもひとしおです」と力を込めた。

春夏通じて初の甲子園2勝をつかみ、8強を目指す。「本当に苦しい試合だった分、20年ぶりに(甲子園で)校歌が聞けてうれしかったです」と高橋監督。聖地で満開の笑顔を咲かせた一関学院が、新たな歴史を築いていく。【山田愛斗】

◆岩手県勢のサヨナラ勝ち 夏は73年1回戦で盛岡三が延長11回、八代東にスクイズ(記録は内野安打)による1-0で勝って以来49年ぶり。

◆岩手県勢の対京都 夏は8度目の対戦。岩手が勝ったのは1919年の盛岡中以来103年ぶり3度目。3勝ともサヨナラ勝ち。

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