名門の2年生エースが、進化して甲子園に帰ってきた。横浜(神奈川)が2年連続で初戦を突破し、甲子園春夏通算60勝目を挙げた。先発した杉山遥希投手が9回を6安打2失点、無四死球で完投勝利。昨夏は1年生で「背番号1」を背負うも、初先発で序盤KOされた。苦い思い出を残した甲子園の先発マウンドで、成長した姿を見せた。

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1年前の雪辱を果たした。横浜の左腕・杉山は、この日最速135キロの直球、スライダーとチェンジアップを交えてコーナーを突き、三重打線を手玉に取った。「久々の甲子園で少し力が入りすぎた」と序盤は高めに浮いたが、回を追うごとに修正。終わってみれば無四死球完投で122球をまとめた。「去年の屈辱というか、絶対に今年は勝ちたい。『自分がエースなんだ』という気持ちで投げました」。堂々とした口調で振り返った。

好調の証しは頭にある。投球のたびに帽子がずれてかぶりなおしたが、これも調子のバロメーターの1つ。「帽子がずれている時の方がキレというか、すごく勢いがあるという感じ。自分の中では良い意味ではあります」。この日は勢いのあまり、頭から帽子が飛んでいくこともあった。

1年生エースで挑んだ昨夏の経験が糧になった。2回戦の智弁学園(奈良)戦に先発するも、4回6安打5四死球の乱調で3失点KOされた。「アップアップで頭が真っ白になるくらい、緊張していました」。一般客が入らなかった甲子園でも、雰囲気に完全にのまれた。

その反省と、元監督の渡辺元智氏(77)の助言もあり、今年は間合いを取ることを意識する。走者が出たらけん制を入れ、アウトを取ったら周りへの声掛けを積極的に行い、自分に余裕を持たせた。神奈川大会決勝では、1万9000人の大観衆の前で完封。この経験を自信に変え、再び戻った聖地でも堂々たる投球を見せた。

杉山の投球に村田浩明監督(36)は「昨年は悔しい思いをして、『ここ(甲子園)に帰ってくる』という思いで1年やってきました。大きく成長につながる1勝だと思います」と称賛した。今夏は、神奈川大会を含めた8試合全て2失点以下。エースを中心とした堅い守りを武器に、24年ぶりの夏頂点を狙う。【阿部泰斉】

▽横浜・玉城(好リードで杉山を完投勝利に導く)「三重打線は強く振れる打者が多くいた。タイミングをずらすことを(配球の)主な目的にしました。杉山は強気で投げてくれる。頼もしい存在です」

▽横浜・鉾丸(3回2死の一塁走者。盗塁の際の暴投で一気に三塁へ。続く緒方の先制打を呼び込む)「積極的に攻めていけました。ホームを相手よりも先に踏めたのは、攻める気持ちがあったから。次もどんどん攻めていきたい」

◆春夏通算60勝目 横浜は甲子園で春夏通算60勝目(春23勝、夏37勝)。歴代15位の報徳学園、高松商に並んだ。