第104回全国高校野球選手権大会は20日に甲子園で準決勝を行う。甲子園通算58勝を挙げたPL学園元監督の中村順司氏(76)が準々決勝の戦いを振り返った。

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大優勝旗が、今まで行ったことのない東北、滋賀にたどり着くのか。それとも、横綱・大阪桐蔭を破った下関国際の勢いが大会最終盤を席巻するのか。楽しみな4校が勝ち上がった。

ああ、これが高校野球の素晴らしさだな…と思うシーンを準々決勝で見た。1つは大阪桐蔭戦での下関国際・賀谷(かや)君の決勝打だ。同点に追いついた直後の5回の一塁守備で落球し、また勝ち越されてしまった。つらかっただろうし、悔しかったと思う。

その選手が、9回に逆転2点打。エラーしたり大事な場面で三振した選手に、挽回のチャンスが巡ってくる。それも仲間がつないでくれたからだ。4番の賀谷君は決勝打で応えた。この信頼感は、準決勝以降への力になるはずだ。

もう1つは近江で見た。高松商戦の8回1死一、二塁で、大黒柱の山田君が右足の異変で降板。打席には、そこまで3安打2打点の浅野君。近江にとっては大ピンチで、星野君が無失点救援と踏ん張った。

いつまでもエースに頼りきりではいられない。みんなで頑張ろう、山田君を助けようという気持ちで大接戦を制した。それが高校野球だと思う。大黒柱1人に負担をかけまいという思いが打線の攻撃力を上げ、投手陣を成長させた。今の近江は、準優勝したセンバツからまたスケールアップしたチームになっている。

東北2校も洗練された好チームだ。聖光学院は打撃がいいし、小技もうまい。仙台育英は愛工大名電戦の2回2死三塁で、尾形君がセーフティースクイズを決めた。試合巧者の愛工大名電に対して、あの作戦を成功させた。チーム力の高さがわかる得点シーンだった。

どこが勝ってもおかしくない、本当に予想が難しい。それだけに楽しみな残り3試合になった。(PL学園元監督)