仙台育英(宮城)が「4度目の正直」で白河越えを果たす。甲子園では夏2度、春1度の準優勝を経験。東北勢としても決勝に過去12度進出しながら、いまだに優勝はない。22日の全国高校野球選手権決勝では下関国際(山口)と初優勝をかけて激突。21日は甲子園で練習し汗を流した。

仙台育英は145キロ超え投手陣5人の継投を軸に、打線はコツコツつないで確実に得点を奪ってきた。準決勝までは「ノーアーチ&ノー完投」。これを貫き、優勝を成し遂げれば史上初めての快挙となる。

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仙台育英に歴史的瞬間が近づいている。それでも、最速145キロのエース左腕、古川翼投手(3年)は落ち着いていた。決勝を控えているが「その先にも試合があるという気持ちで、これまでと同じように1戦1戦戦い抜こうというイメージです」。21日の甲子園練習ではキャッチボールで入念に投球フォームと体の状態を確認。斎藤蓉投手(3年)とともにブルペン入りし、マウンドや変化球の感覚を入念にチェックした。

仙台育英は最速145キロ超え5投手による継投が最大の武器だ。エースナンバーを背負う古川は、2回戦の鳥取商戦で2回無安打無失点、3回戦の明秀学園日立(茨城)戦で2回2/3を5安打2失点、準々決勝の愛工大名電(愛知)戦で4回6安打2失点(自責1)と、登板した3試合は、いずれも2番手で投げてきた。

初優勝をかけて対戦する下関国際とは共通点があるとみる。「今年の仙台育英は抜けている選手、すごく注目されている選手がいない。1人1人が力を出し、チーム全員で勝つ部分は下関国際さんと似ている」。高校野球において完投は珍しくないが、準決勝までの4試合はすべて継投。打線も単打をつなぐスタイルで本塁打は0本だ。

決勝戦でも気負いはない。2番手以降での出番が予想される古川は「相手どうこうよりも、後半に登板し、自分のチームに守備から流れを持ってくる投球を決勝でもできればいい」。5投手は「全員がエース」を合言葉に高め合ってきた。初優勝をかけた舞台でも、バトンをつないで勝つだけだ。【山田愛斗】

◆白河の関 勿来(なこそ)の関(福島県いわき市)、念珠(ねず)ケ関(現鼠ケ関、山形県鶴岡市)とならぶ奥羽三古関の1つ。栃木県との県境に近い福島県白河市に5世紀ごろ、蝦夷(えみし)の南下を防ぐとりでとして設置された。奈良時代から平安時代ごろには、人や物資の往来を取り締まる機能を果たした。白河関跡は国指定の史跡。関跡を境内とする白河神社には、源頼朝の挙兵を知った義経が鎌倉に向かう道中、勝利を祈願したと伝わる。西行、松尾芭蕉ら歌人、俳人も多く訪れ、名歌を残した。東北勢は甲子園で春夏通じて優勝がなく、悲願のVはこの関所になぞらせ「白河越え」といわれてきた。